フレッシュマン講座

研削といし編2010

 Q 研削といしについて教えてください
 A 研削といしとは加工物を研削したり切断する機械工具の一種で、次の3要素で構成されています(図1)。
 (1)と粒(グレーン)=加工物を削る刃物
 (2)結合剤(ボンド)=刃物を保持するホルダー
 (3)気孔(ポアー)=切屑を取り除いたり、研削中の熱を発散させるための隙間
 研削といしを取り扱う作業者は、研削といしの危険性を十分認識し、正しく安全に取り扱うことができる知識と技術を有する者でなければなりません。


図1 研削といしの3要素

 Q 研削といしの特徴を教えてください
 A 特徴は次の通りです。
 (1)と粒は常に加工物より硬い(焼入鋼や超硬バイトなどが自由に削れる)。
 (2)使用中に刃先の減ったと粒は、たえず新しい刃を出すが、それがだめになると脱落し次の新しいと粒が出る(この現象を「自生作用」という)。
 (3)切り込みが小さいので加工物の仕上り状態がきれいである。
 (4)刃先が無数にあり研削速度が速いので、研削が小さいわりに能率が上がる。
 (5)切削加工と異なり加工中の熱は大部分が加工物に吸収されるので機械研削では多量の研削油剤を必要とする。
 安全上、特に重要な事項は(2)と(4)です。最近急速に発達しつつある高速研削や重研削(ヘビーグライディング)などは、こうした基礎の上に成り立った新しい研削技術であって、安全なくして高能率研削はあり得ません。

 Q 研削といしの種類と表示方法を教えてください
 A 研削といしには非常に多くの種類があり、その総数は億単位といわれます。まず研削方法には、機械や加工物を手に持って研削作業を行う「自由研削」と、「機械研削」があります。
 研削方法の違いで研削盤(グラインダ=図2)の種類に応じて研削といしの形状、寸法および最高使用周速度が異なり、さらに、加工物の材質や研削条件によって、仕様(と粒、粒度、結合度など)が多岐にわたります。
 このため、一見して研削といしの種類や性質が分かるように研削といしの表示方法が定められています。
 この表示方法は、国際的にはISO規格によって、国内的には研削盤等構造規格およびJIS規格により統一されています。
 (1)形状(図3)=研削といしの形状には、平形、オフセット形、ストレートカップ形などの種類があり、それぞれに研削に使用できる使用面が決まっています。
 (2)寸法=研削といしの寸法は、外径(ミリ)×厚さ(ミリ)×孔径(ミリ)の順序で表示します。
 (3)と粒=「と粒」は大きく分けてアルミナ質系と炭化ケイ素質系があります。加工物の材質と研条件により適した物を選定し使用します。アルミナ質系は一般鉄鋼・工具鋼などの金属用に適し、炭化ケイ素質系はアルミニウム・真鍮・銅などの非鉄金属に適しています。
 (4)粒度=「と粒」の大きさを「粒度」といい、研削面の仕上精度により選定します。「粒度」は数値で表し、その数値が小さいほど粗く、粗い「と粒」を使った研削といしほど強度は弱くなります。
 (5)結合度=研削といしの硬さを『結合度』といい、アルファベットで表し、Aに近いほど軟らかくなります。一般に硬い加工物には軟らかめの研削といしを、軟らかい加工物には硬めの研削といしを用います。
 (6)組織=研削といしの全容積中にしめる「と粒」の容積比を「と粒率」といい、この大小で組織の粗密を表します。
 (7)結合剤=「と粒」と「と粒」を結びつけているものを『結合剤』といいます。主な種類としてビトリファイド(記号=V)、レジノイド(記号=B)、繊維補強付レジノイド(記号=BF)、ゴム(記号=R)、シリケート(記号=S)、マグネシア(記号=Mg)、シェラック(記号=E)があります。
 ビトリファイド研削といしは、広範囲の研削作業に用いられ、最も安定した性質を持っており、主に機械研削に使用されています。
 レジノイド研削といしは、各種の人造樹脂を用いますが代表的なものは、フェノール樹脂(ベークライトなど)で自由研削・粗研削に多く使用されてきました。最近では次第に機械研削の分野でも用いられるようになりました。
 レジノイド補強研削といしは、ガラス繊維などをレジノイド研削といし中に入れたもので、回転および側圧に強く、切断といし、オフセット研削といしがこの代表的なものです。
 ゴム研削といしは、研削油剤に対してはレジノイドより安定しているが、薄物の切断といしが多いので、保管が悪いとひずみを生ずることがあります。
 シリケート研削といしは、材料が水ガラスなので研削油剤や水に溶け、劣化することがあります。
 マグネシア研削といしは、一種のセメントが結合剤なので、古いものほど強度が増すと考えられがちですが、一般に耐水性が劣るので保管中に湿気を帯びたもの、梅雨期を越えたものなどは強度が低下しているものがあり注意が必要です。
 シェラック研削といしは、天然樹脂なのであまり強度が期待できず低速のラップ仕上げ用にのみ使用されます。

図2 研削盤(グラインダ)


図3 研削といしの形状例

 Q 研削といしの安全度とは何ですか
 A 安全度は、安全性を確保するため、最高使用周速度や衝撃値などの基準が設けられています。また平衡度や耐水性にも注意が必要です。
 (1)最高使用周速度=最高使用周速度は安全上絶対守らなければならないもので、いかなる場合でもこれを超えた速度で使用してはいけません。
 最高使用周速度とは、研削といしが安全に使用できる最高限度の周速度のことをいい、毎秒何メートル(メートル/s)の単位で表示します。
 (2)衝撃値=補強入りオフセットといしは、主として側面を使用するので回転試験のほかに側面に対する衝撃試験を行い、その衝撃値で規制されています。
 (3)平衡度(バランス)=研削といしのような高速回転体には、平衡度(バランス)の良否が大きな問題となります。平衡度の不良な研削といしは、振動、片減り(平衡度の軽い側が早く減る)を起し、加工物の仕上げ精が悪くなるだけでなく、極端な場合は研削といしが破壊することがあります。
 (4)耐水性=機械研削用のレジノイド研削といしは、ほとんどが湿式研削なので、必ず研削油剤を使用しています。耐水性を考慮して最高使用周速度が決められています。
 自由研削用のレジノイド研削といしは、乾式で使用するため耐水性が考えられていないので湿式での使用は禁物です。

 Q 研削といしを使用中に加工物が削れなくなることがあるのは、なぜですか
 A 理想的な研削状態を「正常形」というのに対し、研削といしの減りが早すぎて加工物が削れなくなった状態を「目こぼれ形」、切屑が気孔中に詰まって加工物が削れない状態を「目づまり形」、摩耗した『と粒』が表面にならび加工物が削れなくなる状態を「目つぶれ形」といいます(図4)
 「目こぼれ形」になった研削といしで、そのまま研削作業を続けると研削といしの片減り現象を生じ、振動、加工物のくい込み、タタキ、加工物の飛ばし、研削といしの破壊などの事態を生じる場合があります。
 目づまり・目つぶれの状態になれば、研削抵抗が過大になり、加工物と研削といしに大きな研削熱が発生し、加工物には研削焼け、研削割れ、さらには残留応力によるひずみ、熱膨張による寸法および加工精度の不良、加工変質層発生などのトラブルが多発します。
 これらのトラブルを防止するには
 (1)作業に適応した研といしのみを使用する。
 (2)適切なドレッシングを行う。
 (3)無理な作業(研削圧力、過大切込など)を行なわないことが必要で、とくに高速研削、高圧研削(重研削)の場合には十分な注意が必要です。


図4 研削現象

 Q 研削といしの事故を防ぐには
 A 研削といしの取り扱いについての3原則(1)ころがすな(2)落とすな(3)ぶつけるなに注意してください。研削といしは、すべて割れる可能性のあるものです。
 まず『特別教育』によって研削といしや、研削盤についての十分な知識を習得し、研削といしや研削盤を安易に取り扱うことがいかに危険であるかを認識することが一番大切なことだといえます。

 Q 研削といしの使用に際しては、「特別教育」が必要なのですか
 A 「研削といしの取り替えまたは取り替え時の試運転の業務」は、厚生労働省令により、「危険または有害な業務」に指定されています(労働安全衛生規則第三十六条)。
 事業者は労働者を厚生労働省令で定める「危険または有害な業務」に就かせる時は、当該業務に関する『特別の教育』(労働安全衛生法第五十九条第三項)を行ったうえで、十分な知識および技能を有すると認めた者、いわゆる有資格者を研削といしの取り替え、または試運転の業務につかせる必要があります。
 自由研削用といしの取り替え、または取り替え時の試運転業務にかかわる『特別教育』は「安全衛生特別教育規定」により、学科教育4時間以上、実技教育2時間以上の『特別教育』が必要です。
 参考文献としては中央労働災害防止協会発行「改訂グラインダ安全必 携」(研削といしの取り替え・試運転関係特別教育用テキスト)があります。

 日本レヂボン品質保証部/渡辺 直人

お勧めの書籍