フレッシュマン講座

炭酸ガスレーザ切断編2010

 レーザを用いた熱加工には、切断や溶接、表面改質などがあります。切断加工分野でレーザ切断は、ガス切断(*1)プラズマ切断(*2)に並び、広く利用されている切断方法の一つです。
 本文ではレーザの概要および、切断加工分野で最も一般的な炭酸ガスレーザ(CO2レーザ)を用いた金属の切断について解説します。
 *1ガス切断=鉄と酸素の酸化反応熱を利用して切断する切断方法。
 *2プラズマ切断=切断する材料と電極間にアーク放電をして、高温・高密度の熱源を作り、この熱を利用して切断する切断方法。
      ◇
 Q レーザの語源について教えてください
 A レーザは「Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation」の頭文字をとってLASERと書きます。
 全体を直訳すると「放射の誘導放出による光の増幅」との意味になります。簡単にいうとレーザは「光の増幅」または「増幅された光」といえます。

 Q レーザ光は蛍光灯や電球などの普通の光とどう違うのですか
 A レーザ光は、日常生活で目にする蛍光灯や電球から発せられる光と同じ人工的な『光』です。しかし、その性質が蛍光灯や電球から発せられる光と異なります。
 レーザ光には、(1)広がらずにほぼ真っ直ぐに進む(2)波長、周波数が単一でその位相がそろっているなどの特徴があります。
 この結果、レーザ光は反射ミラーを組み合わせることにより、発振器から出たレーザ光をほとんど損失することなく、所定の位置に導くことが可能です。またレンズによる集光性が非常に良く、高エネルギ密度の光エネルギを得ることができます。

 Q 金属の切断に使用するレーザはどのような種類があるのですか
 A 一言にレーザと言っても、多くの種類がありますが、大きく分けると気体レーザ(CO2レーザ、COレーザ、エキシマレーザ、HeーNeレーザなど)と固体レーザ(YAGレーザ、ファイバーレーザ、ディスクレーザ、ルビーレーザ、ガラスレーザなど)に分類されます。
 加工用に用いられるレーザとしては、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザなどが挙げられます。その中で金属の切断に最も多く使用されているのはCO2レーザです。

 Q なぜCO2レーザは金属の切断に適しているのですか
 A 金属の切断では、(1)切断に必要なレーザ出力(数kW)を容易に安定して安価に得ること(2)高品質の切断を行うため、レーザ光の品質が高いことがレーザに要求されます。
 CO2レーザは数kWのレーザ出力を発振効率10%〜290%(電気エネルギからレーザエネルギへの変換効率)で容易に取り出すことができ、またこのときのビーム品質も高く、切断に適したレーザといえます。
 現在、金属の切断に使用されているCO2レーザの出力は1〜6kWです。

 Q レーザ切断の特徴は何ですか
 A レーザ切断は他の熱切断方法と比べて、(1)切断溝幅の小さい切断ができ、熱影響部や熱ひずみの少ない切断ができること(切断した製品の寸法精度がよいこと)(2)金属、非金属を問わず切断できること(3)非接触で切断できるので工具の消耗等がなく、また材料の硬度に関係なく切断できること(4)自動化が容易に行えること(5)発生するノロや粉塵の量が少なく、環境に優れているなど、多くのメリットがあります。
 表1はレーザ切断と各種熱切断方法の種々項目での比較を示していますが、多くの項目でレーザ切断が優れています。


 Q レーザ切断は、どのような所で使われているのですか
 A レーザ切断は造船・橋梁・建設機械・シャーリングなどの様々な切断工場で使われています。

 Q レーザ切断の原理について教えてください
 A 図1にレーザ切断の簡単な原理を示します。
 レーザ切断では、レーザ発振器から発生したレーザ光を、レーザ光の反射率の高いミラーを用いて切断点まで導き、集光レンズにより集光して材料に照射します。昔、子供の頃虫眼鏡を使って太陽光線で紙を燃やしたのと全く同じ原理です。
 しかし、そのビームの強さが全く異なり、金属の切断では、集光したレーザ光の直径は0・1〜0・4ミリ程度の大きさで、エネルギ密度は10の5乗〜10の7乗W/平方センチになります。
 レーザ切断はレーザ光を切断材料に照射するだけではなく、レーザ光の照射と共にアシストガスと呼ばれるガスを同時に切断材料に吹き付けます。
 アシストガスは切断材料の種類によって種々選択されます。アシストガスには、(1)レーザ光の照射による溶融物を切断材料から排除する(2)切断材料の燃焼を促進する(酸素を使用した場合)(3)溶融飛散物から集光レンズを保護するなどの役割があります。

図1 レーザ切断の原理

 Q CO2レーザではどのような材料が切れるのですか
 A 基本的にレーザは、レーザ光を透過する材料やレーザ光を反射する材料の切断には不向きです。
 金属材料では、軟鋼や高張力鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、チタンなどが多く切断されています。また非金属材料の切断も行うことが可能で、木材やアクリルなども切断されています。

 Q CO2レーザではどれくらいの板厚の切断ができるのですか
 A 使用するレーザの出力や切断する材料によって切断できる最大の板厚は変わります。現在切断に使用されている最大のレーザ出力6kWの場合、軟鋼材で32ミリ、ステンレス鋼では25ミリ程度まで切断が行われています。

 Q 切断する材料により切断方法は異なるのですか
 A 切断する材料によりアシストガスの種類やアシストガスの圧力が異なります。軟鋼の切断では、アシストガスに酸素を使用し、レーザのエネルギと鉄と酸素の酸化反応エネルギを利用して切断を行います。
 また、ステンレス鋼の切断では切断面の酸化を防止する目的で、アシストガスに窒素を使用する場合があります。軟鋼の切断では、レーザ光と酸化反応により溶融した金属は比較的容易に切溝から排除が可能なため、アシストガスの圧力は、0・1MPa以下です。
 一方ステンレス鋼の切断では、レーザ光により溶融された金属は、切断溝からの排除性が悪いため、アシストガスの圧力は2MPa程度の高い圧力が使用されています。

 Q ピアシングとはどのようなものですか
 A 切断を行う前に切込み開始点で材料に穴あけ作業を行います。この穴あけ作業をピアシングと呼びます。
 レーザ切断に限らず熱加工では、材料に入った熱により材料が変形し、製品精度が低下する場合があります。形切断では、材料の変形を拘束する目的でピアシング後に切断を行う方法が多く用いられています。

 Q ピアシング方法はどのような種類がありますか
 A ピアシング方法は、大きく分けてパルスピアシングとCWピアシングの二つの方法があります。
 パルスピアシングは、レーザビームのON/OFFを繰り返すことにより段階的に材料を除去します。CWピアシングは、発振器が持つ最大エネルギを材料に照射し瞬時に材料を除去します。パルスピアシングは、直径1ミリ程度の小さな穴があけられるため、製品間隔を狭くでき歩留まり率を上げることができる利点がありますが、ピアシングに要する時間は、板厚秒程度と長くかかります。
 CWピアシングは、ピアシングに要する時間は、板厚に関わらず1〜2秒程度と短いため、加工時間が削減できる利点がありますが、ピアシング穴径が板厚に比例して大きくなります。
 二つのピアシング方法は、加工形状などにより使い分けられていますが、最近では、短時間で小さな穴をあけたいとの要望からアシストガス制御やビーム制御の改良が進められ、従来のCWピアシングの時間でパルスピアシングに近い直径の穴があけられるようになってきています。

 Q レーザ切断機の種類はどのようなものがありますか
 A レーザ切断機は、切断する対象材料の形状や切断する材料の大きさ、要求精度により切断機の種類が異なります。形状による違いでは、平板を切断する2次元切断機と、立体物を切断する門型の5軸切断機や、ロボットといった3次元切断機があります。
 2次元切断機では切断する材料の大きさや、要求精度により切断機の種類が異なります。2×4メートル程度の比較的小さな材料の切断を行う場合は、切断台車とレーザ発振器を別置にしたテーブルタイプの切断機が使用されます。
 このタイプでは実際に動くのは軽量な加工ヘッドのみとなり高速の切断に適しています。また、長さ6メートル以上の大きな材料の切断を行う場合はレーザ発振器を切断台車に搭載し、広範囲の切断エリアを確保できる発振器搭載型レーザ切断機が使用されます。

 Q レーザ切断機の構成について教えてください
 A 発振器搭載型レーザ切断機の構成を図2に、外観を図3に示します。
 レーザ切断機は、(1)レーザ光を発生するレーザ発振器(2)レーザ光を切断材料上で前後左右に走査するための切断台車(3)レーザ光を切断点まで導く光路(4)集光したレーザ光およびアシストガスを材料に照射、噴射する加工ヘッド(5)レーザ発振器および切断台車を制御するNC装置(6)切断材料を置くための切断定盤(7)レーザ発振器や光学部品を冷却するための冷却水循環装置で構成されます。

図2 レーザ切断機の構成


図3 発信器搭載型レーザ切断機

 Q レーザ切断機の付帯設備について教えてください
 A レーザ切断機の付帯設備としては、次のような設備や装置があります。
 (1)電源供給設備=発振器、切断台車、冷却水循環装置用に用意します。
 (2)ガス供給設備=アシストガスやレーザガス用のガス供給設備が必要です。消費量によってボンベまたはCE(液化ガス貯槽)により供給します。
 (3)集装置=切断時に発生する粉や有毒ガスを捕集します。
 (4)材料の搬入・搬出装置=材料を切断機に自動的に搬入し、切断終了後、切断機より搬出します。
 (5)エアコンプレッサー=レーザ光が通る光路内を清浄に保つためにエアを供給します。エアコンプレッサーからのエアはフィルターなどで清浄にして光路に供給します。
 (6)NCデータ作成用CAD=切断する形状のNCデータを作成します。

 Q レーザを使用する上での安全対策を教えてください
 A レーザ切断に使用されるレーザ光は強力なエネルギを持っていますが、ほとんどが目で見ることができません。通常レーザ切断機は、レーザ光が通る部分は金属等で遮蔽してあり、直接レーザ光線に被爆する可能性は低いと思われます。しかし強力なエネルギを持っているので、切断部からの反射光や散乱光についても注意が必要となります。
 レーザ切断に従事される方は、作業中に必ず保護眼鏡や適正な作業着を着用する必要があります。保護眼鏡は使用するレーザによって仕様が違いますので、必ずレーザの種類およびその出力に合ったものを選択してください。
 レーザ光だけではなく、(1)発振器に使用している高電圧(数十kVと非常に高圧のものもあります)(2)高温になっている切断後の切断物(3)高速に移動する切断台車(4)アシストガス等の排ガスにも注意が必要です。
 さらに金属の切断を行う場合は、加工部周辺に多量のスパッタ(溶けた金属)が飛散することがありますので、作業エリア内に可燃物を置かないなど、火災に対する注意も必要です。
 その他レーザの取り扱いの詳細については、JIS C6802「レーザ製品の安全基準」および厚生労働省労働基準局「レーザ光線による障害防止対策要綱 基発第0325002号」を参照してください。

 Q レーザ切断の動向と今後の展望について教えてください
 A レーザは、他の熱切断と比べて優れた点が多く切断加工分野ではなくてはならない切断ツールとなっています。
 現在、生産性の向上を目的としてレーザ切断機の高速、高精度化および切断品質向上の取り組みが進んでいますが、レーザの持っているポテンシャルを十分に発揮しているとはいえず、大きな可能性を秘めています。
 今後もさらなるレーザビームの品質向上やアシストガス制御の最適化が進み、切断可能板厚の拡大や切断速度および切断品質の向上が行われていくものと思われます。
 また、最近では、CO2レーザよりも発振効率の高いレーザ発振器が開発されており、今後、切断への適用が検討されより効率の高いレーザ切断が行えるようになると思われます。

 日酸TANAKA生産・技術本部FA機器開発部/沼田 慎治

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