フレッシュマン講座

ガス・プラズマ切断編2010

 Q ガス切断の原理とはどのようなものですか
 A ガス切断とは鉄と酸素の化学反応熱を利用した切断方法です。実際のガス切断は図1に示すように、切断火口から噴出する予熱炎で鋼の切断開始部を発火温度に加熱し、そこへ切断酸素を噴流状にして噴きつけ、鋼中の鉄を燃焼させその熱で母材を溶融させると同時に、燃焼生成物を切断酸素噴流の機械的エネルギーで吹き飛ばし、溝状に除去することによって切断を行います。

図1 ガス切断

 Q ガス切断が可能となる条件は何ですか
 A ガス切断を可能とするためには、酸素と金属の反応熱により、その金属が溶融し吹き飛ばされることで、酸化反応が新しい金属表面との間で持続的に起こる必要があります。これがガス切断の可能な基本的な条件となり、具体的には下記の条件を満足する必要があります。
 〈ガス切断が可能な基本的条件〉
 (1)酸化物の溶融温度(融点)が、母材の溶融温度より低いこと
 (2)母材の発火温度が、その溶融温度より低いこと
 (3)金属酸化物の流動性がよく、母材から容易にはく離すること
 (4)母材成分中に不燃性物質が少ないこと
 具体的な金属材料としては、鉄、炭素鋼、低合金鋼、チタン合金などの金属材材料に使用されますが、鋼中に含まれる各種の添加元素は、その種類と量が切断性に大きく影響するため、特殊な鋼の切断には注意が必要です。

 Q ガス切断の基本的な機器構成はどのようなものですか
 A 基本的な機器構成を図2に示します。実際の切断機には、切断吹管を駆動させる装置が必要になります。切断吹管の先端には火口が取り付けられます。

図2 ガス切断の機器構成

 Q ガス切断を行うためには資格が必要ですか
 A ガス切断に従事する作業者には、「ガス溶接技能講習」の資格が必要です。ガス切断では可燃性ガスと酸素を使用するため、取り扱いを間違うと火傷や火災やガス爆発事故を発生させる危険性がありますので、取り扱う作業者には正しい知識が必要です。

 Q 逆火とは何ですか
 A 予熱ガスの燃焼速度が流出速度を上回り、火炎が逆流して火口の中へ入ってしまう現象をいいます。逆火が起きたときに吹管や配管へ火炎が逆流すると爆発する危険性があるので、必ず安全器などを取り付け、安全対策を行う必要があります。

 Q 可燃性ガスにはどのようなものを使用しますか
 A メタン、アセチレン、エチレン、プロピレン、プロパン、ブタン、水素などのガスが利用されます。アセチレンは火炎温度が高く燃焼速度が速いため切断性が優れているので、利用されることが多いです。大型機ではコストや安全性の面から、プロパンを利用するケースが増えています。

 Q 切断酸素の純度について教えてください
 A 切断酸素の純度は99・5%以上必要とされています。酸素純度が低くなると、切断速度や切断面質の低下の原因となります。

 Q 火口の種類について教えてください
 A 火口には様々な種類形状があり、可燃性ガス、板厚、要求品質、用途、吹管によって使い分ける必要があります。安全のため、メーカーが指定するものを使用してください。
 高速切断用のダイバー火口、開先切断や塗装材には強予熱タイプ火口、板厚150ミリ以上の切断には厚物専用火口などがあります。各火口には数種類の番手があり、板厚によって使い分けています。

 Q 点火、消化の手順を教えてください
 A まず、吹管のバルブは閉じた状態で、酸素、可燃性ガスを所定の圧力まで上げます。次に、可燃性ガスのバルブを1回転半ほど開き、所定の点火ライターで点火します。点火にマッチや裸火などを用いてはいけません。
 さらに、酸素バルブを少しずつ開きます。炎の調整は可燃ガス、酸素の順序で調整します。切断機では、予熱炎を所定の中性炎に調整しても、切断酸素を放出すると炭化炎になるので、この状態で再び予熱酸素バルブを調整し、中性炎に調整し直します。作業を終わって消化する時には、酸素バルブを閉じた後に可燃ガスのバルブを閉じます。

 Q 中性炎、炭化炎、酸化炎とは何ですか
 A ガス切断時の火炎を表現するときに、可燃性ガスが多い場合には炭化炎と呼び、予熱酸素の量が多い場合には酸化炎と言います。可燃ガスと予熱酸素のバランスがよいものを中性炎と呼びます。それぞれの炎の形状を図3に示します。

図3 炎の形状

 Q ガス切断の長所は何ですか
 A 最大の特徴は低コスト性です。レーザ切断機やプラズマ切断機の導入コストに比べて、格段に安くなります。このため数十本単位の同時切断(フレームプレーナ=写真1)などが可能となます。鋼の場合、切断テクニックによっては切断面品質が最もきれいになります。
 また、軟鋼であれば2000ミリ程度の極厚物まで切断が可能となっています(写真2)。プラズマ切断の限界が150ミリ、レーザ切断の限界が50ミリ程度と言われているのに比べ、格段に広い範囲の切断が可能です。

写真1 フレームプーレナ


写真2 板厚400ミリの切断

 Q プラズマとは何ですか
 A 気体の温度が上昇すると、気体を構成する原子が熱運動によって電離し、電子(マイナス)と陽イオン(プラス)に分かれて活発な動きをします。また、プラズマ状態の中では、電子と陽イオンが同じ数で存在するので、電気的には中性となっています。このような状態では、非常に電気が通りやすくなっています。この電気が通りやすい状態をプラズマといいます。

 Q プラズマ切断の原理を教えてください
 A 電気的にプラズマ化された気体を拘束ノズルで絞り込み、サーマルピンチ効果(ノズル内で生成したプラズマアークの回りを冷却するとアークが細くなる現象)やウォール効果(ノズル内壁形状による流体損失が少なく、かつ整流する効果)を巧みに利用し、セ氏2万〜3万度程度のプラズマアークを作り出し、これを溶断熱源として加工物を切断するものです。
 拘束ノズルで絞り込まれたアークは高温度部分が細長くなっています。このように温度が高く、より狭い部分に熱を集中できるため、切断材を容易に溶かすことができるわけです。

 Q プラズマ切断機器にはどのような種類がありますか
 A 図4に示すように、電極から加工物へ電流を流す移行式プラズマと、電極からチップ電流を流す非移行式プラズマがあります。
 移行式プラズマは、加工物に電気を流すために導電性のものにしか適用できませんが、熱効率が高いために高い切断能力が発揮できます。非移行式プラズマでは電気を通さない材料の切断もできますが、熱的エネルギが低く融点の低い材料にしか適用できません。

図4 プラズマ切断の種類

 Q 作動ガスにはどのような特徴がありますか
 A 作動ガスには酸素、エアー、窒素やアルゴン/水素混合ガスがあります。作動ガスによって、酸素プラズマ、窒素プラズマなどとよばれます。

 Q 酸素プラズマの特徴は何ですか
 A 酸素プラズマは鋼の切断によく使われます。これは、エアーや窒素プラズマのように切断面が窒化しないことと、切断速度が速いためです。ステンレス鋼やアルミニウム合金の切断も可能ですが、切断品質はよくありません。

 Q アルゴン/水素プラズマの特徴は何ですか
 A ステンレス鋼やアルミニウム合金など非鉄金属用で、切断速度は速くありませんが良質な切断面が得られます。ガスの配分や電流調整などが難しく、良質面を得るには切断テクニックを必要とします。

 Q 窒素プラズマの特徴は何ですか
 A ステンレス鋼や、アウミニウム合金など非鉄金属の高速切断がスラグフリーで可能です。補助ガスにアルゴン、水素、炭酸ガスを使用すると、アルゴン/水素プラズマと同等以上の切断面も得られます。

 Q エアプラズマの特徴は何ですか
 A 使用するガスが安価であるために、小電流の低コストプラズマに使用されます。軟鋼を切断した場合には切断面が窒化します。

 Q プラズマ切断機の基本的な構成を教えてください
 A 図5に酸素プラズマの基本構成図を示します。プラズマトーチには、電極、チップ(ノズル)などの消耗品が取り付けられます。

図5 酸素プラズマ切断の基本構成

 Q 切断電流について教えてください
 A 切断電流が大きくなると切断速度が上がり、切断可能板厚も厚くなります。切断可能板厚の目安としては、電流値の10分の1程度と言われています。具体的には400アンペア出力ならば40ミリ程度になります。
 切断電流が大きくなると、(1)消耗品の寿命が短くなる(2)電気代が高くなる(3)騒音、粉じんが多くなる(4)薄板の切断品質が悪くなるなどのデメリットもありますので、各板厚に適正な電流を用いる必要があります。

 Q プラズマ切断の長所は何ですか
 A 軟鋼を切断する上では最も切断速度が速いので、大きな形を切断する場合にメリットがあります。ステンレス鋼、アルミニウム合金の切断はガスではできませんし、レーザでは25ミリ程度が限界なのに対し、プラズマでは150ミリ以上の切断実績があります。プラズマ切断機はレーザ切断機ほどのメンテナンスも必要ありませんし、一部の非鉄切断を除けば切断時の調整もガス切断のようにテクニックを必要としないので、NC切断機などでは短期間のトレーニングで安定した切断性能を得ることが可能です。

 Q ガス切断、プラズマ切断ともに上手に切断できているかどうか、視認する方法はありますか
 A 上手に切断できているかどうかの判断は、切断作業の中で最も熟練度を要するものです。
 これを文字で表すのは不可能に近いのが実情ですが、現場作業の中では切断進行部上縁の溶融金属(上ノロ)の発生状況、切断溝中の溶融金属の流れ方、切断溝下部からの溶融金属の排出状況、排出方向など、場合によっては切断音によっても判断されているようです。
 また、切断寸法精度に関しても同じ材質でもロットの違いや、消耗品の消耗度合いで違ってくる場合がありますので、消耗品の定期的な交換や火口やノズル高さの確認・調整といったメンテナンスを施すことが、良好な切断を維持するコツとも言えます。

 小池酸素工業開発設計グループ切断開発課/濱田 智

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