フレッシュマン講座

抵抗溶接の制御・管理編2010

 Q 溶接機の基本動作と制御について教えてください
 A 抵抗溶接の品質を決定する「溶接電流」「通電時間」および「加圧力」は抵抗溶接の3大溶接条件と言います。また電極の先端形状は給電と冷却で溶接品質に影響を与えることから、「電極形状」も含めて4大溶接条件とも言われます。
 通称「タイマ」と呼ばれる制御装置は、この3大溶接条件を含めた抵抗溶接の基本行程を制御しています。図1にスポット溶接機の基本電気回路構成を広く普及している単相交流溶接機の例で示します。開閉器のサイリスタは溶接電流を制御する素子の名前です。抵抗溶接の基本行程は電極下降→加圧→溶接電流の通電→加圧保持→電極上昇(開放)です。
 図2で「初期加圧時間」は行程の起動信号が入力されてから、電極で被溶接物を加圧し通電するまでを言い、圧力が安定した状態で重ねた板を十分密着させる時間を設定します。この時間が短いと加圧力不足により散りが出るなどして溶接が不安定になります。
 「通電時間」は被溶接物に電流を流す時間のことで鋼板の材質、厚さ、重ね枚数によって決めます。
 「保持時間」は通電が終わってから電極が上昇するまでの時間で、電流で溶かした金属を固め、安定なナゲットを形成させる時間を設定します。
 「溶接電流」は重ね合わせて加圧した鋼板を抵抗発熱で溶融させます。この電流制御には、定電流制御方式と電圧補償制御方式(定電圧制御とも言う)がありますが、目標の溶接電流(例えば9・8kA)が直接設定でき、管理がしやすい利点を持つ定電流制御が広く使用されています。定電流制御には図1に示す溶接変圧器の1次側の電流を制御する方法と2次側、つまり溶接電流を直接制御する2次側定電流制御があります。このとき溶接電流の検出はトロイダルコイルを2次側の導体に巻いて行います。一般に、定置式溶接機では2次側定電流を使用し、ロボットでガンを持たせた溶接やマルチ溶接変圧器を使用した専用機などでは、1次側定電流制御が使用されています。
 なお、電流の単位はアンペア、時間の単位はサイクルが使用されます。

図1 抵抗溶接機の基本電気回路構成

図2 溶接の基本行程

 Q インバータ制御溶接機の特徴と動作を教えてください
 A インバータ溶接機は交流式、直流式およびコンデンサ式があります。インバータ交流式の特徴を、一般に広く使用されているサイリスタ制御の単相交流式と比べて挙げますと、(1)ナゲット径の安定範囲が広い(2)溶接の散りが少ない(3)電極の寿命が長い、さらに(4)一線当たりの入力電流が低いことにより、電力設備容量が低く抑えられる、電圧フリッカが少ないなどがあります。
 インバータ交流式(図3)は50または60Hz(ヘルツ)の三相電圧を入力とし、整流器とコンデンサによって整流・平滑する。この直流をIGBT素子でスイッチング制御し50または60Hzの交流に変換し、予め設定された溶接電流に見合った交流電流を溶接変圧器に出力します。
 サイリスタ制御の単相交流式の溶接電流は位相制御により高いピーク電流値と電流停止期間が生じます(図4)。これに対し、インバータ交流式の溶接電流は、『矩形』に近い台形で高いピーク値や電流停止期間がなく、連続して電流が流れます。
 このことは接合部が効率よく発熱し温度上昇が早くなり前述の特徴(1)(2)(3)に繋がります。特徴(4)の入力電流が低くなるのは、力率が良いことと、三相平衡入力のためです。
 また、インバータ交流式は、単相交流式の溶接変圧器がそのまま使える利点があります。
 インバータ直流式は、インバータ交流式の(1)(2)(3)の特徴に加え、制御装置の出力電圧の周波数を商用周波数より約10倍高い600〜1000Hzに上げて溶接変圧器に印加することにより、溶接変圧器を軽量・小型化できます。
 近年、溶接変圧器は更なる軽量化の要求により、構造再構築および、入力周波数を1500〜2000Hzに上げるなどして質量の軽減が行われています。
 この軽量・小型変圧器はロボット搭載のガンに多く使われ、抵抗溶接のロボット化に貢献しています。
 また、直流の溶接電流ではインピーダンス(Ω)が低くなるため、(2)電流が流れやすくなります。このことにより大電流(100kA)を流す溶接機や、ふところの大きい溶接機にも多く使われます。
 溶接の焼けや、ひずみを少なくするために使われるインバータコンデンサ式の特徴は、(1)電流を100A単位で、通電時間を一ミリ秒単位で精密に設定できるため、電流の再現性に優れている(2)入力容量が単相交流溶接機の約10分の1以下でアーク溶接機並みの低入力などが挙げられます。
 溶接電流はコンデンサに蓄えた電気エネルギを使って流されます。なお、コンデンサへの充電は溶接していない時に行われ、溶接している時は充電されません。


図3 インバータ交流制御と電流波形



図4 単相交流サイリスタ制御と電流波形


 Q インバータ制御装置は電流・加圧制御の他にどのような制御をしているのか教えてください
 A 電流監視を行うため、(1)溶接電流のモニタ表示(2)溶接電流が予め設定した範囲外れた場合の警報出力(3)溶接毎の電流を随時記憶させる(パソコン併用)などの機能を備えています。
 また最近は、(4)専用センサをワークや電極近傍に取り付けることなく、溶接部の異常やワークの欠品などを溶接毎に判定する監視能力を持たせた制御装置が開発されています(パソコン併用)。

 Q 溶接作業で、守るべき安全項目の内容を教えてください
 A 溶接機の使用に当たり、機器の特徴や操作方法を会得することに合わせて、安全上守らなければならない事項があります。溶接機の取扱説明書には溶接機を取り扱う上での安全上の注意事項が記載されているので、十分理解した上で使用してください。
 ここに主な基本的事項を述べます。
 (1)電源を「投入/遮断」また、圧縮空気を「供給/停止」する場合は溶接機周辺の安全を確認する(2)適切な保護具を着用する図5(帽子、防じん眼鏡、長袖服、皮手袋など)(3)電極および可動部の間に手、指、腕などを入れない(4)溶接直後のワーク(被溶接物)は熱いので触らない(5)溶接機を使用していないときは装置の電源を切り、配管の中の圧縮空気・残圧を排気し、冷却水を止めるなどです。
 なお、具体的な作業は上司の指示に従って行ってください。

図5 保護具の着用

 Q 冷却水流量・水質管理の要点を教えてください
 A 適正な冷却が行われないと溶接変圧器や二次導体・ケーブルなどの温度上昇により電流が低下するのトラブルを起こします。
 電極1本当たりの水量は電極寿命延長や溶接品質安定のため、打点速度、溶接電流、加圧力によって異なるが、毎分2リットル以上が望ましい。JIS C 9305には、「主回路に使用するサイリスタ用冷却水の電気抵抗率は5000Ω・cm以上でその水質は工業用水に準じたものとする。ただし、水冷部が絶縁されているサイリスタに用いる冷却水についてはこの限りでない」と規定されています。
 冷却水の電気抵抗率がこの値以下になると、漏電電流が大きくなり漏電遮断機が作動し溶接作業ができなくなる恐れがあります。
 これは、冷却水を循環させて繰り返し使用する場合や、地下水を使用する場合に起きることがあります。この場合、良質の水を使用するなどの対策を講じなければなりません。
 なお、インバータ溶接機の入力電源回路は一般に、充電部と冷却水の回路は絶縁されています。

 Q 電極の加圧動作と加圧力の制御について教えてください
 A 加圧の動力には圧縮エアー、サーボモータ、油圧が使われています。この中で構造が簡単で価格が安いエアー式が広く使われています。
 エアー式はシリンダ内のピストンを電磁弁で動かして加圧します。加圧力の調整・設定は手動で調整器を回転させて行うのが一般的ですが、多種混合生産の自動化ラインでは電気アナログ信号で電極加圧力を制御できる電空比例弁(電気制御式圧力調整器)が使われています。
 溶接変圧器の一体型ガンでロボットを使った溶接では加圧の動力にサーボモータが多く使用されています。このとき、加圧動作と加圧力の制御はロボット側で行われています。

 Q 保守・点検の注意事項を教えてください
 A 保守・点検作業は有資格者や溶接機メーカによる教育または社内教育の受講者で溶接機の特徴や性能、動作原理および安全面においてよく理解しているものによって、取扱説明書を熟読した上でかつ安全に行わなければなりません。
 特に機器内部の電解コンデンサは電源を切っても充電電圧が残っている場合があるので必ずテスタで電圧を確認してください。
 また、エアーの供給を止めた後、溶接機配管の中には圧縮されたエアーが残っています。この残圧を抜いてから作業を行ってください。

 Q 品質管理に使用する計測器を教えてください
 A 3大溶接条件である溶接電流と通電時間の測定は溶接電流計で、電極加圧力の測定は加圧力計で行います。
 なお、溶接電流計は溶接電流と通電時間の測定ができます。これらの計器は定期的に校正をしてください。その他に用意するのが望ましい測定器として水量計や絶縁抵抗計などがあります。

 Q 電極の管理について教えてください
 A 電極は溶接部に溶接電流を供給するとともに加圧力を与え、更に被溶接物表面を冷却するのが主な役目です。材料特性は導電性、耐摩耗性、熱伝導性が優れていることが求められます。固定された電極でスポット溶接を繰り返し行うと溶接を重ねるに従い、電極先端の当たり面積が拡大して、溶接部の電流密度・発熱が低減します。このことにより、ナゲットの大きさが縮小して接合強度が低下してきます。
 以上のことから理解できるように、溶接品質を安定に保つには電極当たり面積(先端形状)を管理することが必要となります。
 電極先端形状の管理方法には次の2方法があります。
 (1)集中管理方式=交換方式とも呼ばれ、電極チップを予め用意しておいて電極寿命がきたら交換して、先端整形は専用の整型装置や旋盤などの工作機械を使って加工管理する方式で、安定した先端形状が得られる利点を持っています。
 (2)個別管理方式=ドレッシング方式とも呼ばれ、溶接機に電極を装着したままサンドペーパや専用チップドレッサなどで電極の先端を整形する方式で、簡単な方法ではあるが形状のバラツキが発生しやすいので注意が必要です。
 また、電極寿命でもう一点重要なことは冷却水です。水冷は被溶接物から伝わる熱、電極自体の発熱による先端の軟化を抑え変形を少なくするために大切な要素です。電極チップ交換時には必ず冷却水パイプの長さが正常か、冷却水の流れを阻害するような変形はないかを、ぜひチェックポイントに加えておきたいものです。

 ナストーア開発課/古川 浩人

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