フレッシュマン講座

抵抗溶接編2010

 「抵抗溶接」という言葉は、初めて聞かれる人がほとんどだと思います。
 溶接といえば、建築現場などで火花を散らして、鉄骨を溶接している「アーク溶接」をまず思い浮かべますが、一般的に馴染みが薄い抵抗溶接について解説します。
 一口に言いますと、金属に大電流を流し金属自身が持っている抵抗を利用して、溶接部を発熱させ、溶接させる方法です。抵抗溶接法は自動車をはじめ、鉄道車両や家電などの各種薄板構造物に多用されております。特に自動車組み立て工場では主要な接合技術となっており、無くてはならない溶接方法なのです。
 通勤電車でステンレスやアルミのドアを見ますと、等間隔に凹んだ溶接跡が見られます。これが抵抗溶接の中で、その代表とも言えるスポット溶接で溶接された製品の一例です。皆さんが大好きな乗用車では、約5千点というびっくりするほど数多くのスポット溶接が使用されております。
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 Q 抵抗溶接は、いつ頃から世の中に存在するのですか
 A 抵抗溶接は今から約110年前の1897年、後にボストンのマサチューセッツ工科大学の研究所長となった、トムソン博士が発明しました。
 今日、自動車工場や、鉄道車両、家電会社などで、大小のプレス製品が、非常な速さで次々とスポット溶接され、組み立てられていくのを見ると、なんとまあ簡単に、しかもうまく作るものだなあと感心します。

 Q 「重ね抵抗溶接」とは何ですか
 A 重ね抵抗溶接にはスポット溶接、プロジェクション溶接、シーム溶接などがあります。
 板材(被溶接物)を重ね合わせ、電極で加圧しながら溶接電流を流し、点状(スポット溶接、プロジェクション溶接)あるいは線状(シーム溶接)に接合する方法です。

 Q スポット溶接の特徴は何ですか
 A 溶接部が適当な間隔で、スポット溶接できるので、同じ状態の接合が簡単かつ、きれいに、そして、安価にできることです。また、溶接時間がきわめて短い(0・1〜0・5秒)ため熱影響も少なく、変形や残留応力が少ないことも特徴の一つです。
 さらに、溶接作業に熟練度が要りません。適正な溶接条件を溶接機に設定しておけば、誰でも簡単に溶接できます。しかも信頼性の高い均一な溶接ができるのですから魅力的です。

 Q プロジェクション溶接とはどんな溶接ですか
 A プロジェクション溶接は被溶接物に小さな突起を設け、この部分に電流と加圧力を集中させて溶接する工法です。突起を出すことにより、溶接時の熱平衡(ヒートバランス)を取ることができるため、厚板材や異材料の溶接が可能となります。
 平板とナットの溶接、パイプとパイプブラケットの溶接などに使われています。

 Q シーム溶接とはどんな溶接ですか
 A シーム溶接は2枚の接溶接物を、円盤状の電極で上下から加圧し、円盤電極を連続的に回転させながら、電流を断続的に流します。
 すなわちスポット溶接を連続的に線状に実施する方法です。気密性が必要なガソリンタンクやドラム缶の溶接などに使われています。その他の溶接方法としてはバット溶接、フラッシュ溶接などがあります(図1)

図1 抵抗溶接機の分類

 Q 抵抗スポット溶接の原理を教えてください
 A スポット溶接はジュール発熱を利用した方法で、被溶接物を重ね合わせ、溶接電極で加圧し、電流を流し、溶接部をジュール熱によって加熱し溶融させ、被溶接物を接合する方法です。
 図2のように金属材料において、電流Iを流した時に発生するジュール熱Qは「1ー1式」となります。また、材料の抵抗(固有抵抗)と電流密度で表した単位体積あたりの発熱量は「1ー2式」となります。
 この式はスポット溶接における発熱と温度上昇を考える上で、基本となる重要な式です。
 発熱に寄与する抵抗には、固有抵抗と板・板間の接触抵抗があります。通電初期は接触抵抗で発熱し、次に固有抵抗により発熱が増大します。固有抵抗は温度上昇に伴い、加速度的に増大しますので、短時間のうちに溶融点に達することになります。
 抵抗溶接の3大溶接条件は、溶接電流、電極加圧力、通電時間といわれております。スポット溶接においては電極先端形状も大きな原因となります。

図2 抵抗発熱の基本説明図

 Q 溶接電流はどのように選ぶのでしょうか
 A 溶接電流が小さ過ぎると溶融しません。大き過ぎると、電極と被溶接材との溶融面で溶接材の溶融金属が飛散(表散り)したり、被溶接材間に発生する溶融金属がコロナボンド(図3)を破って外に飛び出し(中散り)てしまいます。溶接電流は中ちりの発生する少し低い電流を選ぶのが一般的です。
 第2の要素、電極加圧力は表散りや中散りを発生させず、電極から被溶接材へ電流を供給する役目と、通電後、溶融金属を加圧しながら冷却し、溶融部の内部欠陥を減少させる役目があります。
 第3の要素、通電時間は、溶接電流と電極加圧力によって異なりますが、被溶接材の凹み(圧痕)が深くなり過ぎたり、熱ひずみが大きくならない時間に選定します。
 またスポット溶接用電極は、スポット溶接による加熱によって変形し、打点数の増加にともない電極先端径は拡大していきます。この電極先端径の拡大により電流密度の低下が起こり、ナゲット径が小さくなり溶接品質が低下します。

図3 スポット溶接の断面図

 Q ナゲットとは何ですか
 A 加熱されて溶融点(軟鋼では約1500度)まで温度が上昇し、冷えて再び凝固した部分のことです。全体として碁石のような形をしている場合が多く、大きなナゲットは強さも大きくなります。
 
 Q スポット溶接電極材質は何ですか
 A 電極材の採用条件は電気の通りが良くて、硬度があり、しかも安価なことです。一般的にはクローム銅が使われております。
 
 Q 抵抗溶接電源にはどのようなものがありますか
 A 図4に示すように、交流式、直流式、蓄熱式の3方式があります。自動車工場においては、交流式が主に使われており、数量的には圧倒的に交流式ということになります。


 図4 スポット溶接機の電源方式

 Q 抵抗溶接におけるインバータの特徴は何ですか
 A 抵抗溶接でのインバータ方式は、電力制御部で周波数を1000〜1600HZの交流に変換することにより、溶接トランスの小型・軽量化が可能となります。近年、スポット溶接ロボットがスポット溶接の主力になっておりますが、トランス付ロボットガンのトランスが小型軽量化されるため、ロボットに搭載するのに、より都合良くなりました。トランス付ガンで交流式のものと比較しますと、約2割位軽くなります。
 インバータ式のほかの特徴は、三相平衡負荷であり、入力容量も軽減できます。さらに溶接電流が、ほぼリップルのない真の直流であること、通電時間制御が商用周波数のサイクル単位からミリサイクル単位に微細化できることです。発熱効率も向上しますが、スポット溶接中に発生するチリを抑えることができる可能性も与えてくれます。
 
 Q コンデンサ式溶接機の特徴と用途を教えてください
 A コンデンサ溶接機は一次側のコンデンサバンクに蓄えられた電荷を、溶接トランスを介して瞬時に放電するもので、非常に小電力で経済的であることが特徴で時代のニーズにマッチしたものです(図5)
 用途は、プロジェクション溶接工法によるもので、10ms程度の短時間に突起部に高密度エネルギーを集中させる工法です。そのため熱影響部が狭くて溶接ひずみが発生しないことから、電子ビームやレーザ溶接工法に限られていたトランスミッションおよびトルクコンバータなどのギア類、高精度圧力容器の工法への置換が可能となります。
 溶接の前段階で必要であった部品の脱脂およびチャンバー内の真空引きが不要となるため設備工程の短縮および簡素化が可能となるほか、また動作を含めた溶接時間が非常に短く、溶接時の媒体が不要、消耗品は電極のみであり保守および管理が容易となり高稼働率が得られます。

図5 Cフレームコンデンサ溶接機

 Q 自動車の車体にはどんな鋼板が使われていますか
 A 自動車ボディーには防錆を目的とした亜鉛めっき鋼板や、軽量化を目的としたハイテン材など様々な鋼板が使われています。
 亜鉛めっき鋼板は、普通鋼板に比べ、溶接電流を大きくする必要があります。また電極の表面にめっき材が付着し、電極の寿命が短くなるので、電極の管理が大変です。
 また、ハイテン材については電極加圧力を軟鋼板の5割程アップさせる必要があります。
 最近では、地球環境を守ろうという気運が近年急速に高まってきました。CO2の排出量が規制されるため、リッターあたりの走行距離を延ばすには、エンジンの性能向上はもちろんですが、車体重量は軽くしなければなりません。車体重量を軽くするために自動車メーカーは、各社とも研究開発を続けております。今後はアルミ材、ハイテン材や樹脂の使用がさらに増えるでしょう。

 Q サーボスポットガンとは何ですか
 A 溶接電極加圧を従来の空圧シリンダーに代わり、電動サーボモータによって行うものです。
 構成としては、図6に示すサーボスポットガンをロボットに持たせ、トランスと加圧/通電部がユニット化されており、加圧力および位置制御をロボットの一つの軸として制御するものです。
 国内の自動車メーカーにおける新規および更新設備においては、品質、環境、トータルコスト面で優位性のあるサーボスポットガンが導入されております。また、最近の傾向としては、軽量・コンパクト化がみられます。

図6 サーボスポットガン
 
 Q サーボスポットガンの特徴は何ですか
 A (1)空圧加圧ガンに比べソフトタッチなので、ワークのひずみと圧痕が低減されます。
 (2)ソフト加圧と打点位置精度の向上により、治具の簡素化が可能になり、生産ライン設備のコスト低減と汎用性の向上につながります。
 (3)加圧力は任意に設定でき、一打点ごと最良の溶接条件を選べるので、散りを低減できます。
 (4)エアーレス化によりエアー排気音が無くなり、作業環境が向上します。
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 抵抗溶接の基礎を述べました。このほかにも多くの基礎知識がこの業界では必要です。体験を通じて、体で覚えてください。

 電元社製作所営業技術部営業技術課/白仁田 正夫

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