フレッシュマン講座

しゃ光用保護具編2010

 
 アーク溶接のアーク光は、非常に高温で強烈な光線を出します。この光線には、目に感じる可視光線のほかに、目に見えない紫外線や赤外線が含まれています。強い光は視神経を刺激して作業を妨げ、紫外線は組織を損傷する作用があるので、目に入ると結膜、角膜等が侵されて激痛を起こします。
 溶接を行う時には、強いアーク光から発せられる有害光線をしゃ断して目を保護するとともに、可視光線を適度の明るさにして作業を容易にするため、しゃ光保護具を使用しなければなりません。
 しゃ光保護具には、保護眼鏡と保護面の2種類があり、表1に示しますJIS T 8141(しゃ光保護具)によって、しゃ光度番号に対する使用区分が規制されています。
 保護眼鏡には、普通眼鏡型、サイドシールド型などがありますが、普通眼鏡型はサングラス程度のもので、特に周囲の作業者が使用します。サイドシールド型は、散乱光線を防止できるよう側面を覆う構造となっていますが、紫外線から皮膚を保護することができません。
 保護面は顔面全部を覆うもので、装着用ヘルメットおよび片手で持って使用するハンドシールド型があります。保護面は、眼鏡では防止できないアーク光やスパッタなどによる火傷から顔面を保護する利点がありますが、これらの保護具であっても斜め方向から入ってくる散乱光線を完全に防ぐことは困難で、十分に注意する必要があります。
 保護面のしゃ光プレートは、溶接の種類や電流値によって適正な明るさ(しゃ光度)のものを選択しなくてはいけませんが、電流値を変えるたびに交換する人はまずいないのではないでしょうか。そのため、液晶を使って容易にしゃ光度を可変できる自動しゃ光面(写真1)が発達してきました。

表1 JIS使用標準

写真1 自動しゃ光面

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 Q 自動しゃ光面とはどのようなものですか
 A アーク光を光センサーが感知し、明るい状態の液晶フィルター濃度を溶接作業に適した暗い状態(設定の暗さに#8〜#13番)に自動的に変換します。アークが終了すると、元の明るい状態(#3番)に戻ります。溶接作業でアークスタートにあわせて溶接面を上下したりする手間が省け、両手が自由に使えるという便利さがあります。

 Q 自動しゃ光面を使うとどのようなメリットがありますか
 A アーク発生の有無で自動的にしゃ光してくれるので、常に溶接状態が確認できます。特にスタートの位置がしっかり確認できるため、アークスタートがしやすく、溶接品質の向上につながります。
 また溶接面を持って作業する必要がないため、あらゆる姿勢での溶接が可能です。複雑で狭い空間でも溶接面を気にせず作業ができ効率が高まります。
 
 Q 自動しゃ光面のアーク光に対する反応速度はどのくらいですか
 A 自動しゃ光面が発売された当初は1000分の1〜1500分の1秒と遅かったのですが、今では1万分の1秒〜3万5000分の1秒でしゃ光するものも販売されています。
 しかし、しゃ光スピードが早く表示されている物が1番良いと判断しがちですが液晶フィルターは温度(外気温、使用環境)によりしゃ光スピー度が変わるため、常温(18〜20度)でのしゃ光スピードで(メーカー)比較するべきでしょう。

 Q 自動しゃ光面の値段の違いにはどのような性能の違いがあるのでしょうか
 A 自動しゃ光面のしゃ光スピードやアーク光を検知するセンサーの違いや液晶フェルター画面の大きさです。また、光センサーの数により、製品の性能の違いが出てきます。例えば、安価な2センサー製品では、低電流に反応しにくいものがあります。
 ティグ溶接でパルス溶接を行った場合など、ベース電流を10〜20A、パルス電流を100A位に設定すると、ベース電流が流れているときにしゃ光しないで明るく戻ることがあります。
 このようなときに、感度調整するSENSTIVITYと明るくなるのを遅くするDELAYモード(戻り速度調整機能)があるタイプを使用すると、パルス溶接の対策になります。また、DELAYモードを速くすると、仮付け作業の効率が高くなります。
 自動しゃ光面を使用するときは、溶接電流の値や、溶接機の種類、周りの溶接作業に影響されないかなどを考慮し、性能を選定する必要があります。
 現在流通しているほとんどのメーカーの自動しゃ光面センサーは光センサーで感知し、しゃ光していますが、隣または正面方向での二人溶接作業時他人のアーク光でしゃ光してしまうことが起きます。
 そのような状態や低電流に対応するため、磁場(電磁波形)を感知してしゃ光する自動しゃ光面もあり、光センサーと磁場(電磁波)センサーをモード切り替えできるタイプがあり、作業条件や作業環境に対応できるようになっています。

 Q 自動しゃ光面のしゃ光性能に対する信頼性はどのようになっていますか
 A 自動しゃ光面は、北欧で発明されました。北欧人は、太陽の光に対する耐性が弱く、紫外線や強烈な太陽光に弱いため、目を保護する意識が強く、自動しゃ光面が発達し、製造するメーカーが多かったと思われます。
 そのため欧州ではEN規格が早くから準備され、しゃ光能力や必要応答速度等、またテスト方法等についても規定されています。後にこの規格を基に米国などでも規格が制定されています。皮膚や髪、瞳の色が濃くなっている人種は、太陽光に対する耐性も強く、顔を背けて目をつぶって溶接したり、目の焦点を少しずらして仮付けする日本人には、安全に対する意識は残念ながらまだ低いため、自動しゃ光面のほどんどは輸入に頼っています。
 そのため、我が国では自動しゃ光面に表記できる規格は未制定です。欧州のEN規格、合衆国のANSI規格などのマークが明記されている製品を選ぶことが賢明となります。
 なお、現在までに自動しゃ光面を使用して、目や皮膚に重大な問題が発生したという事例は報告されていないようです。
 
 Q 自動しゃ光面の今後の課題にはどのようなものがありますか
 A 長時間使用する上で、自動しゃ光フィルターを装着する溶接面面体を含めた軽量化の改善や、その他に頭を固定するヘッドバンドの耐久性や装着時に面体がずれないフィット感の向上、大電流溶接時の熱で変形しない液晶フィルターカセット、しゃ光前の透明度の追求も望まれています(現在、一番明るいのが#3番)。それと溶接作業時に発生するヒュームによるじん肺が問題視されるようになり、アーク光に対する保護だけでなく、電動ファンとフィルターによってヒュームを除去する呼吸用保護具と組み合わせた製品も多く開発されています。

 マイト工業業務部/伊東 光男

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