フレッシュマン講座

呼吸用保護具編2010

 「じん肺」という病気を知っていますか。
 粉じんのばく露対策を行なわずに溶接時に発生する「ヒューム」を長期に渡り吸い続けると、現代の医学では治すことのできない、「じん肺」にかかってしまいます。「じん肺」は自覚症状が現れるまで一般に10年以上掛かると言われ、一度発症すると粉じん作業から離れても症状が進行することがあり、とても恐ろしい病気です。
 「じん肺」から身を守るには「プッシュプル型換気装置」などで、作業環境から粉じんを取り除いてしまうことが理想であり、また個人レベルでの確実な粉じん対策が可能となる、呼吸用保護具(マスク)の着用が有効です。
      ◇
 Q 溶接時に発生する白い煙の対策は
 A 溶接時に発生する白い煙は「溶接ヒューム」と呼ばれる非常に細かい金属のチリです。例えばアーク溶接時には約2千度に熱せられた金属が蒸発し、その直後に空気中で冷やされるため酸化金属の固体粒子になります。そのため、防じん用のフィルターでなければ、有害物質をろ過することができません。防毒マスクの吸収缶だけでは対応することができませんので注意が必要です。
 現在、多くの溶接作業現場で使用されているのが、「防じんマスク」または「電動ファン付き呼吸用保護具」です。「防じんマスク」にはフィルターを交換できるタイプの「取替え式」と、面体そのものがフィルターとなっている「使い捨て式」があります。金属ヒュームの発生する現場では粒子捕集効率が95・0%以上(区分2)を選択します。「防じんマスクの選択と使用等について」(平成17年2月7日付、基発第027006号)。ただし、酸素欠乏環境下や、高濃度の粉じんが発生する作業などでは、送気マスクなどを選択します。

 Q 防じんマスクを選ぶ際の注意点はありますか
 A 防じんマスクを選択する際にはまず、厚生労働省が定めた国家検定に合格しているかどうか、図1のような標章が付いているかどうかを確認してください。その上で作業内容に合った区分のマスクを選択します。
 次に、選択したマスクが自分の顔にしっかりフィットするかを確かめることが重要です。すき間が空いている状態では粉じんが面体内に漏れ込んでしまいます。しっかりフィットしているかを確かめる手段として、マスクの外と中の粉じん濃度を測定し、漏れ率を求めることのできる測定器を使用する方法があります(写真1)
 この測定器を使用すれば、自身の装着状態を客観的な数字で知ることができ、自分の顔に合ったマスクを選択することができます。

図1 国家検定標章


写真1 漏れ率測定器

  Q マスクを使用する際の注意点を教えてください
 A 防じんマスクはただ装着すればいいというわけではありません。正しい使用方法を守ってこそ、その効果が発揮されます。そのためのいくつかのポイントを紹介します。
 ▽ポイント1/使用前点検=各部に不具合があれば、粉じんの漏れ込みの原因となります。使用する都度、取扱説明書に従い、使用前の点検を行なってください。
 ▽ポイント2/作業前のフィットテスト=防じんマスクは着用者の肺の力によってフィルターでろ過した空気を吸入する構造であるため、吸入の際に面体内が陰圧となります。このとき、マスクの接顔部と顔面との密着性が悪いと、隙間が生じ、そこから粉じんが漏れ込む可能性があります。そこで、防じんマスクが顔に密着しているかを確認する「フィットテスト」を作業前に行うことが求められています。
 フィットテストの方法で、面体内を陰圧にして密着性を確認する陰圧法のフィットテストがあります。図2のように吸気口をふさいで息を吸い込み、どこからも空気が吸えずにマスクが顔面に吸い付くようならOKです。
 密着性が確保できない状態のまま、作業で使用することはできません。顔の形状にあったマスクを選び直すか、送風機能がある、電動ファン付き呼吸用保護具などを検討しましょう。
 ▽ポイント3/装着方法=ヘルメットの上からしめひもをかけることや、タオルを口にあてて装着してはいけません。
 面体と接顔部の間に髪の毛やヒゲを挟みこんだまま試用使用するのも避けてください。密着性を確保できず、隙間から漏れ込む可能性が高くなります。マスクは必ずその他の保護具をつける前に装着しましょう。
 ▽ポイント4/適切なフィルターの交換=溶接作業をしていると、フィルターへヒュームの堆積が進むにつれ、フィルターが目詰まりして通気抵抗が上昇します。使用限度を超えたフィルターは息苦しくなるばかりでなく、密着性が悪い場合には粉じんの漏れこみを誘発するため、フィルターを適切なタイミングで交換することが重要です。
 フィルターを交換すべきタイミングは現場ごと、作業ごとで異なります。作業場で決められた交換の基準に従って行ないましょう。

図2 作業前のフィットテスト

 Q 電動ファン付き呼吸用保護具はどんなマスクですか
 A 防じんマスクは、粉じんの堆積とともに呼吸が息苦しくなりますが、電動ファン付き呼吸用保護具は面体内に送風を行なうため、呼吸負担を軽減させることができます。
 さらに、送風により面体内が陽圧に保たれるため、万が一、顔と面体との間に隙間が生じても、風が面体の内から外へ吹き出して粉じんの漏れ込みを防げます。安全性と快適性を兼ね備えた電動ファン付き呼吸用保護具は現在、溶接作業以外にも、多くの建設現場などで使用されています。

 興研安全衛生ディビジョン販売企画セクション/市橋 誠

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