フレッシュマン講座

マイクロ加工編2010

 Q マイクロ加工の種類とその原理を教えてください
 A マイクロ加工とは、携帯電話、デジタルカメラ、MP3プレイヤー、エアコン、テレビなど家電用のエレクトロニクス部品や、自動車用の電装部品など、比較的小型・微小なものに対する微細な接合、切断、穴あけなどの加工をいいます。
 接合には、はんだ付け、熱圧着、超音波溶接、マイクロアーク溶接、抵抗溶接、レーザ溶接などがあります。はんだ付けは、はんだをヒータチップ、温風、ハロゲンランプやCWレーザの光などを当てて溶かし、はんだを介して金属同士をつなぐ方法です。熱圧着は、ヒータやCWレーザで加熱しながら加圧して被接合物を軟化させて接合する方法です。絶縁性のエポキシ樹脂などに導電性の良い金属粉や導電性カーボンなどのフィラーを分散させた「導電性接着剤」を使用して加熱圧接する方法もあります。超音波溶接は、被溶接物に加圧した状態で超音波振動を与えて金属表面付近の結晶粒界を原子間距離内で接近し溶融温度に達することなく冶金結合を形成させる溶接方法です。
 マイクロアーク溶接は、被溶接物にプラス電位を与え、トーチの電極にはマイナス電位を与えて被溶接物とトーチとの間にアーク放電を発生させ、そのアーク熱を利用して金属を加熱溶融して接合する方法です。抵抗溶接は、被溶接物の金属を一対の電極で加圧保持しながら溶接電流を流したときに発生する抵抗発熱(ジュール熱)を利用して金属を溶かして接合する方法です。
 レーザ溶接は、被溶接物にレーザ光をレンズで集光してレーザエネルギーを集中させて金属を溶融する方法です。
 切断や穴あけでは、加工対象物が小型・微小になるのに伴い、刃物やドリルといった工具が小さくなり強度が持たないため、レーザで加工することが多くなってきています。レーザ切断や穴あけは、レーザにより被加工物を溶融させ、アシストガスの吹き付け圧により溶融物を吹き飛ばして除去する加工法です。

 Q マイクロ接合における各接合方法のメリット・デメリットを教えてください
 A 簡単に表にまとめました(表1参照)


表1 各接合方法のメリット・デメリット

 Q パルス発振と連続発振の違いは
 A レーザ溶接では、短時間で発振を区切るパルス発振と、レーザを連続して出力し続ける連続発振の2種の発振方式があります。連続発振をCW発振(Continuous Wave)とも呼びます。パルス発振はmsec単位の時間だけレーザを出力するため、溶接周辺部の熱影響を少なくすることができます。主に微細なものや薄いものに適しています。パルス発振で溶接したアルミ電池電極タブ付けの溶接例を写真1に示します。
 CW発振は、長い距離を安定した溶接幅で速く溶接することができます。CW発振の特徴を生かした、リチウムイオン電池アルミ缶の封止溶接を写真2に示します。


写真1 アルミ電池電極タブ付けの溶接例


写真2 リチウムイオン電池アルミ缶の封止溶接

 Q レーザ波長による加工の違いは
 A レーザ光を非線形結晶に通すと、その結晶内部に2次・3次などの非線形分極が誘起されてレーザ周波数の2倍・3倍の高調波が発生します。2倍の高調波発生(second harmonic generation=SHG)、3倍の高調波発生(third harmonic generation=THG)、4倍の高調波発生(fourth harmonic generation=FHG)といい、YAGレーザでは、基本波長が1064nm(近赤外)で、YAGーSHGは532nm(可視、緑色)となり、THGは354nm(紫外)、FHGは266nm(紫外)となります。
 レーザ加工はレーザエネルギーが被加工物に吸収されることによって、溶接や切断、穴あけ、マーキングなどができます。波長が異なることで被加工物の吸収特性が変わり、その加工特性は変わります。一般的に金属に対しては、波長の短い方が吸収率は大きく、効率の良い加工ができます(図1)
 つまり、SHGのレーザを使用すれば、より小さなエネルギーで加工ができます。またFHGでは、分子間結合を直接切る低温加工(アブレーション加工)ができます。

図1 レーザ波長と金属の吸収率

 Q マイクロ加工にはどのような応用例がありますか
 A 1、はんだ付けに代わり最近では熱圧着という方法があります。応用例として、携帯電話の液晶ディスプレイ・フラットケーブルと基板との間に異方性導電膜を挟んで、上方からセラミックヒータにより加熱しながら加圧し、電気的な接合をしています。
 2、マイクロアーク溶接は、微細部品や非鉄金属類(銅合金、高融点材料等)の接合に多く利用されています。特に環境問題や接合品質向上を目的に、これまで「はんだ付け」されていたチップコイル、ミニチュアリレー、小型振動モータなどコイル部品における被膜細線と端子の接合に有効です。また車載用電子制御モジュールパックの銅端子の接合への利用も多くなっています。銅端子の接合では抵抗溶接や超音波接合が拡散接合になるのに対して、マイクロアーク溶接は溶融接合が可能となり安定した接合強度を得ることができます。
 3、抵抗溶接の微細溶接では、モリブデンやタングステン製で左右対称の2個部品の間に絶縁材を挟んで一体にした電極を使用して、金メッキした銅線や金製リボンを微小基板のパターンにパラレル・ギャップ溶接をしています。
 4、レーザ溶接の微細溶接では、医療用手術器具、歯科治療部品、液晶TV用バックライトのカップ電極、電子部品リード端子、細線コイルを巻き付けた端子、LEDストップランプと端子、二次電池の封止、携帯電話用振動モータコア、HDD用ピックアップ部などが様々なところで利用されています。
 5、レーザマーキングの応用例としては、金属や樹脂製のICなどのパッケージに浅彫り、金型、銘板などに深彫り、摺動部品などの表面に傷がない平滑な黒色(酸化)マーキング、樹脂の表面を発泡させるマーキング、材料表面にある塗装やめっきなどを剥離して下地を露呈させる表面剥離マーキング(自動車、オーディオ、携帯電話などの照光ボタンに多用)、FPD(フラット・パネル・ディスプレイ)ガラスの内部に2次元コード(大きさ1ミリ以下)をマーキングしています。また、シリコンウエハーへのマーキングには、ラップドウエハー(鏡面仕上げ前)に対するハードマーキングとミラーウエハー(鏡面仕上げ後)に対するソフトマーキングがあります。ソフトマーキングは、飛散物の発生を抑制する為に低繰返しのSHGーYAGレーザパルスを照射してウエハー表面を蒸発させずに溶融加工を施してドットでマーキングするものです。これに対しハードマーキングは、ウエハー表面を蒸発させ80〜100μm深さのドットを形成させるもので基本波のQスイッチYAGレーザを使用します。

 Q 新しいアプリケーションなど最近の技術動向はどうですか
 A 1、グリーンレーザではんだレス
 SHGーYAGレーザを使用すれば、プリント基板のICリードを直接レーザ溶接することができます。はんだが不要であり、溶接個所のみ短時間加熱するため、ICへの熱によるダメージが少なく、信頼性を損ねることがほとんどどなくなります。
 2、ファイバレーザ溶接
 Yb(イッテルビウム)を添加されたファイバに半導体レーザを入射して励起するファイバレーザ溶接機は、ビーム品質が良く集光性が良いため、細線(線径25μm程度のSUS金網)や薄板(箔)の溶接および薄板の曲げ加工に適用ができます。溶接以外には、ステンレスやアルミ板の切断、はんだ付けや樹脂溶着にも応用可能です。
 3、スキャナを使用した溶接、及び加工
 ガルバノメータスキャナと呼ばれる駆動素子(X軸・Y軸)に取り付けた2枚のミラーでレーザビームを走査し、fθレンズ(振れ角に応じて平面上に焦点を結ぶレンズ)を通して被溶接物に集光するスキャナ溶接が普及してきています。あらかじめCADデータなどで設定した多点位置あるいは範囲をスポット溶接またはシーム溶接をすることができます。金属製携帯電話やモバイル機器などの内部部品の高速多点溶接に使用されています。近年では従来のスキャナと比べて、繰り返し精度が10倍程度高いデジタル制御のスキャナも利用されています。
 4、水晶振動子の気密封止
 表面実装型水晶振動子のパッケージにリッド(蓋)をろう付けする方法は、今まではローラ電極を平行に配置したパラレルシーム溶接機を使用するものでした。しかし、電子機器小型化に伴い、さらに水晶振動子の小型化が進み、このローラ電極ではスペース面で対応できなくなってきています。非接触で微細な接合方法として電子ビームがありますが、導入コスト、ランニングコストが高く、設置スペースも大きくなります。最近ではそれに代わり同じ非接触のレーザ(細径ビームであるファイバレーザ溶接機)とスキャナヘッドを組み合わせ、ビームをパッケージに合わせて走査して接合する方法に代わりつつあります。
 5、レーザによる樹脂接合
 従来、樹脂の接合には接着剤が使用されており、接着剤を塗布↓固定↓乾燥する製造工程のインライン化が困難でした。しかし、近年ではレーザを使用した接合方法が利用されています。これをレーザ溶着と呼びます。レーザ溶着では、局所的に熱を入れて樹脂を溶融させるため、乾燥が不要となりインライン化が容易になります。また接着剤を使用しないことで、リサイクルの面で大きなメリットがあります。
 6、薄膜太陽電池の薄膜除去
 地球温暖化防止、クリーンで持続可能な再生可能エネルギーを生み出す太陽電池は世界的規模で注目を浴び、その中でも原料問題が少なく製造時のエネルギー使用およびCO2排出が小さい薄膜型太陽電池が、開発、実用化されてきています。その製造工程でガラスや樹脂などの基板4辺の縁部(エッジ)の薄膜を5〜20ミリ幅で除去して絶縁するエッジデリーション(Edge Deletion)が必須です。従来は機械的なサンドブラストが使用されていましたが、基板へのダメージもあり、YAGレーザによるエッジデリーションが行われています。
 ビーム形状を矩形にし、かつトップハットにしたレーザを600μmのビーム径に広げ加工されています。矩形のメリットは円形ビームに比べオーバーラップ率を低くでき高速で加工することが可能です。

 ミヤチテクノスサービス本部東日本プレサービス課/堀内 健生

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