フレッシュマン講座

アーク溶接ロボット編2010

 現在の生産設備において、もっとも重要な設備の一つは、産業用ロボットです。産業用ロボットには、アーク溶接ロボット、スポット溶接ロボット、ハンドリングロボット、塗装ロボットなどがあります。このフレッシュマン講座では、アーク溶接ロボットについて、Q&A形式で紹介します。
       ◇
 Q 溶接作業にロボットを用いるメリットは何ですか
 A ロボットを生産設備に用いるメリットは、次のものが挙げられます。
 ・高品質=教えられた溶接条件で安定した品質を確保できる。
 ・高生産性=人と比べてスピードが速い。
 (1)高品質
 ロボットは設定された速度で、毎回、同じ軌跡を溶接します。ワーク(被溶接物)の位置決めを確実に行うことで、同じ品質で溶接加工物を生産することができます。溶接作業を作業者が行う場合に比べると、ポカミスなどを管理する必要がなくなります。
 (2)高生産性
 作業者で行う溶接よりも早い溶接速度で溶接を行えるため、生産性が向上します。また、ロボットを溶接作業に用いると、単純に生産計画を立てることができます。ロボットは、環境を選ばないため、人を溶接現場という環境から解放することができます。

 Q アーク溶接ロボットの構成を教えてください
 A アーク溶接ロボットのシステム構成を、図1(アーク溶接ロボットのシステム構成図)を用いて説明します。
 まず、(1)はロボットです。(1)のロボットの動作の仕組みについては、後で詳しく説明します。
 (2)は、(1)ロボットを動作制御するロボットコントローラです。
 (3)は、(2)ロボットコントローラに接続されているプログラミングペンダントです。
 (4)は、溶接トーチ、(5)はワイヤ送給装置、(6)はロボット用溶接電源となっています。
 (2)ロボットコントローラと(6)溶接電源は、IOやアナログケーブルで接続されています。


図1 アーク溶接ロボットのシステム構成図

 Q ロボット用溶接電源とはどのようなものですか
 A 作業者が溶接する場合には、溶接速度は毎分30〜50センチですが、ロボットによる溶接では毎分60〜200センチの高速となり、ロボット用溶接電源では、高速でのアーク安定性能が必要です。
 人は溶接状態を目で観察しながら、溶接が良好となるように、ワークごとに対応して溶接作業を行います。
 ロボットは、溶接状態を確実に再現することで溶接不良を防止します。このため、溶接ワイヤ送給の負荷変動、一次側電圧変動などに影響を受けない溶接周辺機器が必要となります。
 最近のロボット用溶接電源は、デジタルインバータ化が進んでおり、溶接電源の内部には、高速なCPUを使用して、溶接電流値・溶接電圧値・ワイヤ送給装置のサーボ制御を高周波数で実現しています。

 Q アーク溶接ロボットの動作する仕組みを教えてください
 A 最初に産業用ロボットの動作する仕組みを説明します。その後、アーク溶接ロボット特有の仕組みを説明します。
 (1)産業用ロボットの仕組み
 産業用ロボットは、通常6個(または7個)のサーボモータによる関節と、各関節を連結するアームとで構成されています。
 制御方式は、ティーチングプレイバック方式です。これは、ロボットに作業を教え(ティーチング)、ロボットはそれを再生(プレイ)するという方式です。
 (2)アーク溶接ロボット特有の仕組み
 アーク溶接を行うロボットは、溶接条件を制御するというアーク溶接作業に適応するための機能があります。代表的なものは、溶接条件の制御指令、アークが発生しているかどうかの監視機能などがあります。
 ロボット本体での特徴としては、溶接ケーブルがアームに内蔵されています。溶接ケーブルがアームに内蔵されることで、溶接ケーブルのさばきや、溶接ケーブルとワーク、ジグとの干渉を考慮する必要がなくなり、アーク溶接に非常に適しています(図2)

図2 アーク溶接ロボット

 Q ティーチングプレイバック方式とは、どういったものですか
 A ロボットには、大きく分類すると、二つのモードがあります。一つは、ロボットに教示(ティーチング)をするモード、もう一つはロボットが実際の作業を教示されたとおり再生するモード(プレイ)があります。
 教示をするモードとは、ロボットを操作するオペレータが、実際にロボットを動作させ、ロボットの移動した位置をロボットコントローラに記憶させるモードです。
 ロボットを移動させるために、プログラミングペンダントを使用します。弊社製ロボットコントローラDX100のプログラミングペンダントを紹介します(図3)
 ロボットを動作させるときには、各軸動作させる座標系、ロボットが固有に持つ直交座標系、ツール(アーク溶接の場合は溶接トーチ)の座標系、ユーザが独自に作成するユーザ座標系、などがあります。
 オペレータは、この座標系を選択した後、軸操作キーを押して、ロボットを所望の位置に動作させます。その後、エンターキーを押すことで、その位置を登録します。
 次に、アーク溶接用のジョブを作成します。ロボットをプログラミングペンダントで、溶接開始点へ移動させ、位置を登録します。溶接開始点では、アーク溶接開始命令を登録します。溶接開始命令では、溶接条件(溶接電流値、溶接電圧値、溶接速度など)を設定します。
 続いて、溶接部を教示して、最終的に溶接終了点へロボットを移動させ、位置を登録します。溶接終了点で、アーク溶接終了命令を登録します。その後、ロボットを待機位置へ移動させます。これで、アーク溶接のジョブは作成できます。
 プレイモードでは、先ほどのジョブを呼び出し、スタートボタンを押下することで、ロボットは、教示されたとおりの速度と補間方法で移動するとともに、指定された溶接条件で、アーク溶接を実行します。

図3 プログラミングペンダント

 Q ロボットをティーチングするための資格などは必要でしょうか
 A 一般にはロボットメーカーで2日間程度の講習会を受講して操作技能を修得できます。ロボットを動作させること自体は、特に難しいことはありません。ただし、ロボットを操作する上では、最低限知っておくべきことをこの講習を通じて習得します。
 また、アーク溶接のロボットを使用して、アーク溶接をうまく行うには、溶接のノウハウを生かしたティーチングを行うことが必要です。そのためには、溶接を十分に理解している溶接経験のある方がティーチングを行うことが、よいと思います。

 Q ロボットを設置する場合の注意事項を教えてください
 A ロボットは、可搬重量や可動範囲などの違いで複数の機種が存在しています。
 設置するスペースは、各メーカの取扱説明書やカタログより、大きいスペースを確保してください。なぜなら、ロボットの据付けにおいては、安全柵を設置する必要があるからです。
 労働安全衛生規則第150条の中で、「産業用ロボットの自動運転中は、マニプレータなどに接触する危険があるため、労働者が近づけないように、柵または囲いを設けるなどの措置を講ずべきこと」が義務付けられています。
 マニピュレータ運転中の設備損傷や作業者および周囲の人への万一の災害を避けるために、必ず安全柵(JIS8433に適合したもの)を設置してください。

 Q ティーチングは、パソコン上でできないのでしょうか
 A オフラインティーチングソフトで行うことができます。当社の場合は、MOTOSIMーEGというオフラインソフトがあります。
 これは、パソコン上でロボットを配置し、ジグやワークなどをCADデータから読み込んで、バーチャルな空間をパソコン上で再現することができます。ティーチングも、マウスを移動することで簡単にジョブを作成できます。ロボットのタクトタイム検証や、治具との干渉チェックなどを行うことも可能です。オフラインティーチングソフトを使うことで、ライン立ち上げ時間を大幅に短縮することが可能です。

 Q ロボットとポジショナーを組み合せた協調溶接のメリットって何ですか
 A 協調溶接は、ロボットが溶接トーチを持ち、ポジショナー上に、ワークをセットして、ロボットとポジショナーを動作させながら、溶接作業を行うシステムです。
 ポジショナーは、ワークを回転・傾動させることができるため、作業者がワークをセットするときなどに、作業の負荷を軽減することができます。
 また、このような協調システムでは、ポジショナーを動作させることにより、溶接施工に適した溶接姿勢をとることができます。つまり溶接を高品質に行うことが可能になります。


図4 ロボット用ポジショナー

 Q ロボットには、外界の状態を検知するようなフィードバック機能などないのでしょうか
 A 溶接用センサとしては、3種類あります。
 (1)接触式センサ (2)電流値センサ (3)ビジョンセンサーーがあります。
 接触式センサは、ワイヤに電圧を印加して、ワークを直接タッチするセンサです。ワークにワイヤ先端がタッチした位置をロボットに取り込んで、基準の位置との差を求めてロボットの位置に補正を行います。
 電流値センサは、ロボットを溶接中にウィービング(トーチを左右に揺動)させ、その両端の電流値を検出して、溶接線を倣うセンサです。
 通常、電流値センサを使用する場合には、接触式センサで溶接開始点・終了点を検出し、補正を行い、溶接実行中の熱ひずみによる溶接線のずれを電流値センサでリアルタイムに補正を行います。
 ビジョンセンサは、レーザ光を照射する投光器とレーザ反射光を受光する受光器が一つの筐体に入っています。
 ビジョンセンサは、溶接トーチに装着されて、トーチの先行部に、レーザを照射します。照射されたレーザ光を画像解析して、溶接線を検出し、ロボットにリアルタイムで補正を行いながら溶接を行います。
 ただし、これらの3種類のセンサを使用する場合でも、基準のワークに対してのティーチング作業は必要です。

 安川電機ロボット事業部ロボット技術部・産業用ロボット技術部技術第2課/守田 隆一

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