フレッシュマン講座

エンジン溶接機編2010

 Q エンジン溶接機とは、どのような機械ですか
 A エンジン溶接機は正式にはエンジン駆動溶接機といい、溶接用発電機をエンジンで駆動することにより発電し、溶接の電源とするもので、一般的には手溶接(被覆アーク溶接法)で使用されます。
 1959年に日本で初めて小型軽量のエンジン溶接機が実用化されて以来、エンジン溶接機は、屋外での溶接作業に欠くことのできないものとして発展を続けています。

 Q エンジン溶接機はどのような特徴がありますか
 A 容量は80〜500Aまでで、ガソリンエンジンタイプとディーゼルエンジンタイプがあり、騒音公害に対処する防音型、スローダウン装置などの省エネ技術を搭載した省エネ型、多用途に用いられる交流補助電源付の兼用型、1台で2人同時溶接ができるダブル型などが製造されています。

 Q エンジン溶接機の駆動エンジンは
 A エンジン溶接機の駆動エンジンには、ガソリンエンジンとディーゼルエンジンがあります。
 ガソリンエンジンについては、2サイクルエンジンと4サイクルエンジンがありますが、最近は排気ガス規制の関係から、4サイクルエンジンが使用されています。
 一方、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンより重量が重く、丈夫で大容量の溶接機に適しており、ランニングコストが安いのが特徴です。

 Q エンジン溶接機でどのような溶接ができますか
 A エンジン溶接機は、一般の溶接機と同様に次の溶接法に適した製品が製造されています。
 (1)被覆アーク溶接法
 被覆アーク溶接法は、被覆剤を塗布した溶接棒を電極として母材との間にアークを発生し、そのアーク熱を利用して溶接するものです。一般には手溶接法と呼ばれます。
 (2)炭酸ガスアーク溶接法
 炭酸ガスアーク溶接法は、手溶接棒の代わりにコイル状に巻かれた溶接ワイヤが、送給ローラによりトーチ先端に送られます。
 このワイヤは、トーチ先端のコンタクトチップで通電、炭酸ガスの雰囲気中で母材との間にアークを発生し、その熱で母材とワイヤを連続的に溶かし溶接する方法です。
 炭酸ガスの代わりにマグガス(一般的にはアルゴンガス80%と炭酸ガス20%の混合ガス)を使用するものをマグ溶接、アルゴンガス100%を使用するものをミグ溶接と呼びます。
 (3)セルフシールドアーク溶接法
 セルフシールドアーク溶接法は、ノーガスアーク溶接やノンガスシールドアーク溶接などいろいろな呼称で呼ばれていますが、現在ではセルフシールドアーク溶接に統一されています。
 セルフシールドアーク溶接は、炭酸ガスアーク溶接法やサブマージアーク溶接法によく似ていますが、アーク部に外部からフラックスおよびガスを供給することなく溶接する方法です。すなわち、チューブ状の溶接ワイヤに脱酸材とフラックスを装填してあり、アーク発生とともにアーク柱および溶融池を外気の酸素や窒素から保護して行う溶接法です。
 (4)ティグ溶接法
 ティグ溶接法は、タングステン電極と被溶接物との間にアークを発生保持し、このアーク部を不活性ガスでシールドして溶接する方法です。不活性ガスとしては一般にアルゴンガスが用いられます。タングステン電極はほとんど消耗せず、単にアークを出すための電極として用いられますので、極薄板の場合を除いて溶融部の金属を補うためにフィラーワイヤや溶加棒が使用されます。
 ティグ溶接法はあらゆる種類の金属の溶接が行えます。

 Q エンジン溶接機の溶接特性にはどのようなものがありますか
 A 溶接機はアークを負荷として、これに電力を供給するための電源装置です。したがって、アークを安定に発生維持させるために、各種溶接法に適した次の溶接特性があります。
 (1)垂下特性
 垂下特性とは、手溶接に代表される電源特性であり、電流が増加すると溶接機の出力電圧が下がる特性です。垂下特性の特徴はアーク長を変化させるとアーク電圧の変化により溶接電流が変化し、微妙な手加減でビード幅、深さ、たれの調整ができます(図1)

図1 垂下特性

 (2)定電流特性
 定電流特性とは垂下特性の特性曲線の垂下度をほぼ垂直としたものです。定電流特性の特徴はアーク長の変動にかかわらずほぼ一定の電流で溶接できますので、母材の溶融状態が安定して、均一な溶接結果が得られることです(図2)

図2 定電圧特性

 (3)定電圧特性
 炭酸ガスアーク溶接、マグ溶接、ミグ溶接のように細径のワイヤに大電流を通じ高速に自動供給されるものに使われます。定電圧特性の特徴は、溶接中にアークが変動しても溶接電流の増減により、ワイヤの溶融速度が増減して、常にアーク長を一定に保つことです(図3)

図3 定電流特性

 Q エンジン溶接機はどこで使用されていますか
 A エンジン溶接機は、電源の無い建設・土木の現場や、パイプラインの建設など移動する現場、プラントや工場の保守作業などで主に使用されています。エンジン溶接機の用途には大きく分けて溶接作業と溶断作業があります(図4)
 溶接作業としては
 (1)タンクや管の溶接
 水道・ガス管溶接、油・水タンク溶接、パイプラインの溶接に使用されています。この溶接は高度な溶接技術が要求され、溶接部分は非破壊検査が行われ、針の穴程度のピンホールでも溶接のやり直しとなります。すなわち、溶接作業において安定したアーク性能の機械が要求されます。
 (2)重量鉄骨の溶接
 産業機械の現場、砂利採集機・ブルドーザ、大橋梁、船舶、車両、建築物の基礎工事などの溶接に使用され、強度な溶接品質が要求されます。溶接作業においては大電流で強いアークの出力可能な機械が要求されます。
 (3)軽量鉄骨溶接
 サッシ・シャッターの取付、門扉・フェンス・小物取付工事、農機具などの溶接に使用され、アーク特性についてはあまり要求されませんが、アーク切れについては作業能率が低下するので、アーク切れの少ない機械が要求されます。
 もうひとつの用途である溶断作業(アークエアガウジング)は、カーボン電極と金属との間にアークを発生させ、金属を溶融させると同時に、電極の外側に平行に噴射するジェットによって溶融金属を吹き飛ばす方法で、ハツリ作業、切断、穴あけなどが必要な現場で使用されています。

図4 エンジン溶接機の用途

 Q エンジン溶接機の容量は、どのようにして選定しますか
 A 容量の選定は、まず使用する溶接棒の溶接電流によって決められます。図5は通常使用されている軟鋼、下向きの場合のアーク電圧と溶接電流です。もちろん、溶接棒の種類、溶接条件によってこの値は変わります。


図5 容量選定

 Q エンジン溶接機の使用率とは何ですか
 A 使用率は機械の運転率でなく、運転時間全体に対するアークを出している時間の割合のことです。
 溶接作業は連続で行うことはほとんど無いので、多くの場合、溶接機は定格使用率を40〜60%に制限し、機械の特徴である可搬性や機動性に重点を置いて、小型・軽量に設計されています。
 使用率とは、10分を周期として、アーク溶接する時間をこの10分間に対する割合(百分率)で表したものです。
 例えば、使用率50%とは、10分間周期のうち5分間アーク溶接を行い、5分間アーク溶接を休止して使用するという意味です(図6)。また、定格使用率とは定格出力電流を流す時の使用率をいい、実際使用の場合の使用率とはかならずしも一致しません(通常、屋外作業で使用される溶接機の使用率は20〜30%程度です。また、溶接棒1本の消費時間は2〜3分です)

図6 使用率50%の場合

 Q エンジン溶接機の仕様諸元の用語について説明してください
 A 溶接機の用語について説明します。
 (1)定格出力電流
 定格出力電流とは、標準状態(大気圧760mmHg、温度20度C、湿度65%)で溶接機を定格回転速度、定格負荷電圧、定格使用率で運転した場合に流すことができる最大の電流をいいます。
 (2)出力電流
 溶接機の出力端子から溶接ケーブルを通って、アークに流れる電流をいいます。
 (3)アーク電圧
 アークを通じて流れる電流を溶接電流といい、そのときに溶接棒と母材との間にかかっている電圧をアーク電圧といいます。また、アークを出していない状態を無負荷といい、そのとき溶接棒と母材との間にかかっている電圧を無負荷電圧といいます。
 (4)定格負荷電圧
 溶接機を定格回転速度において定格出力電流を通じた場合の溶接機の出力端子における負荷電圧をいい、その値は「E=20+0.04I」となります(E=定格負荷電圧、I=定格出力電流)

 Q 近年のエンジン溶接機のニーズなどを教えてください
 A 近年のエンジン溶接機は鉄工業、建設業だけではなく設備工事業、レンタル業、農林水産業など広い範囲に使用されるようになりました。
 また、市場のニーズから溶接機能プラス交流発電機の機能を持ち、2人の作業者が同時に溶接できる機種や、被覆アーク溶接だけでなく炭酸ガスアーク溶接、ティグ溶接、セルフシールド溶接などが可能な機器も製造されており、エンジン溶接機の多様化と多機能化が進んでいます。
 被覆アーク溶接の溶接特性においてもアーク長の変動にかかわらず、ほぼ一定の電流で溶接できる「定電流特性」と、微妙な手加減でビード幅・深さ・たれの調整が可能な「垂下特性」のものがありましたが、最近では「定電流特性」から「垂下特性」まで作業者の好みや用途に合わせて勾配を自在に調整できる機種もあります。

 Q エンジン溶接機の環境対応を教えてください
 A バックホウやブルドーザなどの車両系建設機械と同様にエンジン溶接機も「排出ガス対策型建設機械の指定制度」の対象であり、メーカー各社は同基準に対応する機種を市場に投入しています。また、最近ではエンジンの技術に依存せず、排出ガスを大きく削減する技術として、自動アイドリングストップ機能付のエンジン溶接機(図7)も開発されています。


図7 アイドリングストップ機能を搭載した2人用溶接機

 デンヨー経営企画部/藤本 庄一郎

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