溶接の歴史

1995年〜1999年

1995年(平成7)から1999年(平成11)まで
 この期の世界的動向としては、先進国の温暖化ガス削減を目指した京都議定書の採択(1997)に見られるような地球規模での環境問題がテーマになったし、欧州ではEUの単一通貨としてのユーロが関係11カ国で流通しはじめた。(1999)
 
国内では阪神・淡路大震災(1995)による倒壊構造物や、原子炉「もんじゅ」の事故(1995)、核燃料再処理工場内での爆発事故(1997)、敦賀発電所での配管よりの放射能漏れ事故(1997)などがあり、溶接を含めた構造物としての安全性が議論された。国内の製造部門での景気動向は依然として低迷を続けていたが、ロボット溶接は増加傾向で、製造システム化が進められたし、レーザ加工では高出力による適用板厚範囲の拡大などを狙った大型化が一段と進められた。その一方で、環境面に配慮した鉛フリーはんだなどの実用化が動きはじめた。

1995 阪神大震災
阪神大震災で多くの構造物が倒壊する。これにより溶接関係も規定の見直し、不良施工や溶接継手のあり方などが問題となり、各地で緊急調査報告会が開かれる。*44[日]

1995 国勢調査での金属溶接・溶断作業者数
5年毎に行われる国勢調査で、国内の金属加工作業者の内、金属の溶接・溶断作業者総数を1995年は27万5400人で、前回(1990年)調査より13.1%減と発表した。*45[日]

1995 溶接ロボットの出荷台数
日本ロボット工業会は、1995年でのアーク溶接ロボットの出荷台数を前年度比32.4%増の7412台、抵抗溶接ロボットは30%増の5663台と発表した。*45[日]

1995 大型レーザ溶接機
NKKが、世界ではじめての最大出力25KW炭酸ガスレーザ溶接機を、京浜製鉄所の大径電縫鋼管設備内に導入する。*44[日]

1995 米国での溶接機業界

この頃までの米国の主要溶接機器メーカの内、ミラーとホバートがイリノイ・ツール・ワーク(ITW)に買収、ユニオンカーバイドのリンデ事業部は米国エサブ社に吸収、エアコはリンカーンに買収などがあり、業界はリンカーン、ITW、エサブ、サーマダインの主要4社に模様替えとなる。*44[米]

1995 「もんじゆ」の事故
前年臨界に達した、高速増殖炉型原子炉「もんじゆ」の二次冷却材系の周辺から煙が発生したため、動燃は原子炉を止める。当初、溶接不良による漏れではとされていたが、設計不備が主因との調査結果が出た。[日]

1996 アーク溶接ロボットの出荷台数
日本ロボット工業会は、1996年度のアーク溶接ロボットの出荷台数は7863台で前年比3.6%増、抵抗溶接ロボットは6734台で前年比18.9%増と発表した。*45[日]

1996 建築主柱用ロボットシステムの開発

川崎重工業とフジタが、建築現場での主柱溶接用の全自動溶接ロボットシステムを開発、実用化した。システムは溶接とエネルギーユニットから構成され、溶接ユニットには走行台車、防風・遮光装置、溶接ロボット、スラグ取りと、ノズルクリーニング装置を含んでいる。*45[日]

1996 世界最大出力4KW・YAGレーザを受注

石川島播磨重工業が新潟県工業技術研究所から常用最大出力4KWのYAGレーザ機を受注した。*45[日]


1996 橋脚耐震補強用溶接機の市販

耐震性向上の観点から阪神大震災以後急増している高速道路の橋脚への鋼板巻き付け工事用の自動溶接機や溶接ロボットが市販されはじめた。*45[日]


1996 スパッタ半減の炭酸ガスアーク溶接

松下産業機器が、パルス出力制御方式と高電圧印加アークスタート方式の併用で、スパッタが従来機より半減できる炭酸ガスアーク溶接法を開発した*45[日]

1996 自動超音波探傷ロボットの開発
鉄骨加工メーカーの千代田興業が、多関節ロボットの手首部に超音波探傷用の探触子を取り付け、平面や曲面の鉄鋼製品の溶接部を自動探傷するシステムを開発した。*45[日]

1996 高周波誘導加熱による鉄筋圧接機の開発

一般的に鉄筋の圧接はガスバーナによるが、これを高周波誘導加熱に切り替え、従来法の1/4程度加熱時間で施工できる圧接機を、ジェミックスが建築用に開発した。*45[日]

1996 防じんマスクについての労働省通達

労働省が基初505号「防じんマスクの選択、使用等について」を通達した。これにより、これまで使い捨てが常識であった防じんマスクのろ過材について、水洗に耐えるろ過材使用の場合は、洗浄で再使用が可能となった。*45[日]

1997 鉄骨仕口部立向継手用エレガス・ロボット

片山ストラクテックとマツモト機械の共同開発による、鉄骨仕口部溶接向きの自動立向エレクトロスラグ・ガスアーク溶接ロボットの普及活動をはじめた。*45[日]


1997 磁気センサで構造物の欠陥を画像化

九州大学工学部が、導電体の表面欠陥を非接触のマイクロ磁気センサで画像化し、高分解能のパターン検出する技術を開発し、オンラインでの微細欠陥検出が可能になったと発表した。*45[日]


1997 敦賀発電所事故の主因は溶接割れ

日本原子力発電は、2月20日の制御棒系の配管部溶接箇所よりの放射能漏れ事故は、壁と貫通管とのすみ肉溶接部での止端割れが原因と発表した。*45[日]


1997 手・半自動溶接検定試験のJIS改正

日本工業標準調査会溶接部会での審議で、手溶接ではティグ溶接の種目の追加、それに手溶接と半自動溶接の「組み合わせ溶接」などが新設されるJISの改正が決定した。*45[日]


1997 2KWレーザ発振器で32mm鋼板の切断

2KWのレーザ光に、特殊ノズルからジェットガスを吹き付けることで、これまで6KW以上の発振器を必要としていた32mm以上の厚板鋼板の切断が可能になったと、アマダが発表した。*45[日]


1997 船体曲がり外板用片面自動溶接ロボット

 日立造船と日鐵溶接工業との共同で、船体の3次元の曲がり外板を片側からの一層盛り溶接で済ませるロボット装置を開発し、実用化をはじめた。*45[日]


1997 造船用三次元溶接ロボットの増設

 3次元CAD/CAMシステムを結びつけての、小組立工程での溶接ロボットライインを、1ラインから4ラインへとする増設計画を川崎重工業が発表。同様計画をNKKも発表した。*45[日]


1997 アルミ大型部品の自動溶接の実用化

三菱マテリアル他2社で、溶接用レーザ視覚センサ搭載の溶接ロボットシステムを開発し、これまで熱膨張や熱変形が大きいことや、光の反射率が高いなどで、実用化が難しかった大型板材への適用をはじめた。*45[日]


1997 チタン溶接技術検定のJIS規格

 新たにチタン溶接技術検定についてのJIS規格が制定された。*45[日]


1998 普通鋼材の用途別受注量

日本鉄鋼連盟のまとめによると、製造部門での1998年での普通鋼材の受注量は、船舶関係は工事量が豊富だが前年比では2.9%減、自動車は前年比14.5%減などで、製造業のすべてでマイナスとなった。*45[日]


1998 H型鋼杭のジェット水流での切断

大成建設とカコーが、横浜市の宮川橋架け替え工事で、既設のH型鋼杭を研磨材を混入したジェット水流を使つて、地下1.5M箇所での切断する撤去工事を施工した。*45[日]


1998 潜水艦建造での溶接のロボット化

溶接ロボット7台と艦体を回転させるローラ2台を組み合わせ、自走パレットに載せられたブロックがロボット下を通過時に、骨組を下向溶接するシステムを川崎重工業が稼働させた。*45[日]


1998 98国際ウエルディングシショーの開催

「品質がつなぐ世界の溶接・接合技術」を基本テーマに、東京ビッグサイトで国際ウエルディングシショーが開催された。ロボットに関連してのセンサ類の出品の多いのが目立った。*45[日]


1998 鉛フリーはんだの実装

昭和電工でプリント配線板の表面実装で、鉛を使わない鉛フリーはんだ実装技術の適用をはじめた。*45[日]


1998 マグ溶接遠隔モニタリング装置の開発

狭開先部のマグ溶接では開先内の輝度が高く、溶接中のモニタリングが難しいが、アークをフィルターの工夫と、複数のCCDカメラで画像としてとらえ、リアルタイムで合成、モニタリングする装置を川崎重工業が開発した。*45[日]


1998 ロボットで溶接熱歪みの矯正

溶接H形鋼の溶接後の歪みを、ロボットを用い矯正できる、全自動線状加熱による矯正システムを、川崎製鉄が開発した。*45[日]


1998 電気溶接機の生産実績

通産省がまとめた1998年度上期の電気溶接生産実績では、アーク溶接機は6.5万台で、前年同期比21%減、抵抗溶接機は4500台で、こちらも前年同期比16.6%減であった。*45[日]


1998 ダイヘンが大阪電気を子会社化

 溶接機メーカの大手ダイヘンが、1925年創業の溶接機メーカの老舗である大阪電気に資本参加し、子会社化することになった。*45[日]


1999 模擬宇宙でのアーク溶接

 宇宙空間での溶接に取り組んでいるグループが、小型飛行機を使い、急降下飛行で20秒間の無重力状態をつくり、搭載した真空容器内のアーク溶接実験を行い、ステンレス鋼管、鋼の溶接の可能性を確認した。*45[日]


1998 海外での溶接材料関係のJISマーク

工業技術院標準部国際標準課のまとめによると、溶接材料関係のJISマーク表示認定工場は5カ国28工場に増加した。その大半は韓国と台湾である。*45[日]


1999 船底の上向溶接ロボットの開発

NKKが船底を外側から上向溶接するロボットを開発した。板の隙間に上下2本のトーチを水平に挿入し、水冷銅板を板の下部に置き、トーチの首振りで板の隙間をマグ溶接で埋めていく仕組みのもの。


1999 出力10KWのYAGレーザの開発

NECで固体レーザとしては世界最大出力となる10KW出力のYAGレーザを開発した。これにより、擬固時の割れや歪みの少ない加工ができるとしている。*45[日]


1999 神戸製鋼所とタセトでステンレスの新会社

神戸製鋼と日本油脂がステンレス溶接材料の生産会社「神鋼タセト」を設立し、ステンレス棒の生産部門を新会社に移行することで合意した。*45[日]


1999 溶接学会秋季全国大会の開催

沖縄県で行われた秋季大会での論文発表件数は過去最高の249件で、論文内容もここ数年レーザ関係が多いが、今回はその傾向が一層顕著になった。*45[日]



参考文献
*1  トレッガー:世界史大年表 *2  カーター:ツタンカーメン発掘記
*3  朝日新聞:日本科学技術史 *4  シンガー:技術の歴史
*5  ベック:鉄の歴史 *6  田口:鉄の歴史と科学
*7  テンプル:中国の科学と文明 *8  小林:古代の技術
*9  進藤:蝋付けと溶接 *10 桶谷:金属と人間の歴史
*11 清水:鎌倉大仏 *12 宋:天工開物
*13 手塚:溶接のおはなし *14 デリー:技術文化史
*15 ヘルマン:科学年表史 *16 軽金属協会:アルミニウム技術便覧
*17 山崎:電気の技術史 *18 城坂:科学技術史
*19 シモンソン:溶接の歴史 *20 編集委員会:溶接五十年史
*21 アシモフ:科学の発見と年表 *22 日本熔接協会:造船の溶接
*23 佐々木:溶接技術発達史 *24 ボイド:JOINTING NATIONS
*25 溶接協会:日本溶接協会30年史 *26 中山:電孤鎔接の実際
*27 委員会:現代日本産業発達史 *28 機械学会:日本機械学会60年史
*29 造船協会:日本近世造船史 *30 関西造船協会:五十年の歩み
*31 阪大溶接工学科:創設30年史 *32 溶接協会:日本溶接協会40年史
*33 全国高圧ガス溶材組合:全溶連史 *34 造船工業会:日本造船工業会30年史
*35 軽金属溶接会:イナートガスアーク溶接 *36 摩擦協会:摩擦圧接協会二十年史
*37 ボイラクレーン安全協会:20年のあゆみ *38 高圧ガス保安協会三十年史
*39 中山他:戦後科学技術の社会史 *40 原子力開発三十年史
*41 溶接協会:安全衛生委員会20年史 *42 神戸製鋼:神溶会三十年史
*43 溶接協会:車両部会40年の業績 *44 溶接ニュース
*45 溶接技術

お勧めの書籍