溶接の歴史

1990年〜1994年

1990年(平成2)から1994年(平成6)まで
 この期での世界情勢は東西ドイツの統合、ソ連邦の解体、湾岸戦争、中国の社会主義市場経済路線の採用など大きく揺れ動く。その中でわが国の経済も初期の好調から急速に下落し、期末には失業率も過去最高に近づくことになる。
 溶材関係では、1991年までは7%の伸ぴを示していたのが翌年からは15%の減となり、この状態が期末まで続くことになる。特に被覆捧の凋落は著しく、ソリッドワイヤも輸入品などの影響で苦戦するが、フラックス入りワイヤは逆に伸びを示している。
 溶接機器では、1990年では生産台数が史上最高を示すが、以後20%減にまで落ち込む。この中ではエアプラズマ切断機の急減が目立つ。しかし、その一方でマイコン組み込み機、インバータ機は増加し、ファジイ機なども出てくる。溶接ロボットは低価格競争時代に入り、NCガス切断機やレーザ加工装置は堅調に推移する。

1990 溶接機生産台数
 通産省からの統計資料によると本牛度の溶接機の生産台数総計は23.1万台で、前年比で3.5万台増で史上最高になる。特に、標準自動溶接機が伸ぴる。*44[日]

1990 日米溶接シンポジウム
 日本溶接学会・溶接協会と米国溶接協会との相互協力締結による第一回の事業として、日米溶接シンポジウムを横浜産業貿易センタで開催する。主題は先端溶接冶金である。*44[日]

1990 粉体接合加工技術委員会
 溶接協会はHIP・CIPなどによる粉体の加工技術の向上を目的として独立研究委員会を発足させる。*44[日]

1990 溶接技能者不足
 労働省の技能労働者等需給状況調査によると、本年度での溶接技能者の不足数は4.6万人(前年は3.8万人)で不足率は21.8%になる。*44[日]

1991 鉄骨溶接不良対策
 手抜き工事で鉄骨溶接部に重大な欠陥が出たことの対応策として東京都は「鉄骨造等の建築物の工事に関する取扱要綱」を制定し、溶接協会や関係団体に通知する。*44[日]

1991 安全衛生規則改定
 労働安全衛生規則の一部改定で、交流アーク溶接作業を行う時は、全ての交流機に自動電撃防止装置の使用を義務ずける。*44[日]

1992 レーザ加工機
 光産業技術振興会調ベによると、本年度は炭酸ガスレーザ装置の売り止げ83億円で前年度より16%増で、YAGレーザ装置は207億円で9%増となっている。[日]

1992 鉄骨溶接講習会
 建設省が「鉄骨建築物等の品質適正化について」の通達を出し、三階建以上の建築物での「施工状況報告書」を求める。これは一部で鋼材品質、溶接、検査の実態調査で安全件に懸念の出るような事態が発生したことによる。これを機会に溶接協会各支部などで「鉄骨溶接施工マニュアル」講習会が開かれる。*44[日]

1993 溶接技術者資格試験
 WESの溶接技術者資格の前期試験の受験者は、一級907人(前年の26%増)二級で2,508人(前年の20%増)である。これは建築業界などで溶接技術者不足の深刻化が理由としている。*44[日]

1993 鉄骨の溶接
 鉄骨での品質不良問題が再燃し、その主原因が施工側の未熟さより、設計と工事監督側の責任とした、鋼材倶楽部近畿地区の鉄骨問題懇談会がまとめた「施工を考慮した鉄骨設計への提言」が出る。*44[日]

1994 研究者ネットワーク
 溶接学会・溶接協会・溶接接合工学振興会の主催による「工業、国立研究機関における溶接・接合及び関連工学の研究者ネットワークの構築に向けて」のシンポジュウムを東京で開催する。*44[日]

1994 明石大橋の主塔
 一塔あたり2.5万トンの鋼材を使用した、巨大構造物の明石海峡大橋の主塔二基の据え付けが行われる。*44[日]

1994 H-2ロケット打ち上げ成功
 宇宙開発事業団のH-2ロケットが三菱重工業名古屋で製作され、打ち上げに成功する。この1-2段タンクには板厚2mmの高力アルミ合金が使われ、その溶接は交流の待殊ティグ法で行われている。*44[日]

1994 溶接技能試験
 1955年よりはじまった溶接作業者の技能検定試験は、受験者数10.1万人(1982年度)がこれまでの最高であったが、本年はそれを抜く10.7万人を記録した。これは、建築関係で無資格での溶接作業ができなくなったためとしている。*44[日]

参考文献
*1  トレッガー:世界史大年表 *2  カーター:ツタンカーメン発掘記
*3  朝日新聞:日本科学技術史 *4  シンガー:技術の歴史
*5  ベック:鉄の歴史 *6  田口:鉄の歴史と科学
*7  テンプル:中国の科学と文明 *8  小林:古代の技術
*9  進藤:蝋付けと溶接 *10 桶谷:金属と人間の歴史
*11 清水:鎌倉大仏 *12 宋:天工開物
*13 手塚:溶接のおはなし *14 デリー:技術文化史
*15 ヘルマン:科学年表史 *16 軽金属協会:アルミニウム技術便覧
*17 山崎:電気の技術史 *18 城坂:科学技術史
*19 シモンソン:溶接の歴史 *20 編集委員会:溶接五十年史
*21 アシモフ:科学の発見と年表 *22 日本熔接協会:造船の溶接
*23 佐々木:溶接技術発達史 *24 ボイド:JOINTING NATIONS
*25 溶接協会:日本溶接協会30年史 *26 中山:電孤鎔接の実際
*27 委員会:現代日本産業発達史 *28 機械学会:日本機械学会60年史
*29 造船協会:日本近世造船史 *30 関西造船協会:五十年の歩み
*31 阪大溶接工学科:創設30年史 *32 溶接協会:日本溶接協会40年史
*33 全国高圧ガス溶材組合:全溶連史 *34 造船工業会:日本造船工業会30年史
*35 軽金属溶接会:イナートガスアーク溶接 *36 摩擦協会:摩擦圧接協会二十年史
*37 ボイラクレーン安全協会:20年のあゆみ *38 高圧ガス保安協会三十年史
*39 中山他:戦後科学技術の社会史 *40 原子力開発三十年史
*41 溶接協会:安全衛生委員会20年史 *42 神戸製鋼:神溶会三十年史
*43 溶接協会:車両部会40年の業績 *44 溶接ニュース

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