秋葉原日記 (ライブラリ)

溶接のある風景

 昨日は、川崎市にある日本溶接技術センターを訪ねた。
 ここは溶接に関する日本で唯一の常設の教育訓練機関で日本溶接構造専門学校も付属している財団法人。
 1969年の設立で、学生の教育訓練のほか企業の研修や委託試験など溶接や検査に関する幅広い事業を展開していて、外国人の研修にも熱心に取り組んでいることで知られる。
 また、専門学校は、1年制の溶接・検査技術科や2年制の設備・構造安全工学科と鉄骨生産工学科の3学科を擁していて、今年の入学生は23人だったとのこと。
 昨日訪れたらちょうど4月に入学してきた学生の溶接実習が行われていた。被覆アーク溶接による下向突合せ溶接を行っていたから、まさしく基礎訓練の真っ最中という様子だった。
 溶接は工業の基盤技術で、ものづくりの基幹を担っている。
 溶接にもいくつかのプロセスがあって、強い光を放っているアーク溶接がごく一般的だが、自動車工業や鉄鋼業などで多用されている抵抗溶接から、精密部品などに応用されているろう付やはんだ付も溶接方法の一つ。
 技術革新が激しくて、近年、レーザ溶接が登場したり、FSW(摩擦攪拌溶接)が開発されたりしていて日進月歩の状況だ。
 また、溶接は工業にとって不可欠の生産加工技術だからその生産性も重要な要素で、溶接の自動化やロボット化が図られてきている。とくに、ロボット化ということではあらゆる工業技術の中で溶接が最も進んでいるし、中でも溶接のロボット化は世界において日本の最も得意とするところでもある。
 しかし、いかに自動化やロボット化が進んでも溶接は人間の技量に負うところが非常に大きく、いきおい品質の確保は溶接において重要な命題だ。
 溶接が技量に負うところが大きいということは、それだけ溶接の技術を習得することはやさしくはないということもであり、だからこそというべきかそこが溶接の奥深い面白さでもある。
 これほど先進工業に採用され先端技術が次々と開発されている中で、溶接の技量向上に多方面から取り組まれているのものそのゆえんである。
 だからだろうが、溶接ほどコンクールの盛んな技能職種もない。切磋琢磨し、常に技量を磨いていくことは溶接に携わるものにとってほとんど職業的必須要件だ。
 全国すべてで都道府県単位のコンクールが開かれ、その頂点として全国大会が開催されている。
 東日本大震災において甚大な被害を被った宮城、福島両県ではついに昨年は県大会を断念せざるを得なかった。コンクールの意義を知るものとして断腸の思いだったに違いない。
 しかし、その両県において溶接コンクールが今年はついに再開された。先週相次いで宮城、福島両県大会が開催されたが、これは技量向上に強い意識の表れとして理解される。
 また、近年は高校生の間にも溶接への取り組みが盛んになっていて、その延長で高校による溶接コンクールも各地で開催されるようになっている。今や全国の過半数において県大会や地区大会が開催されるまでに至っていて、いよいよその全国大会である「溶接甲子園」も視野に入ってきた。
 アークが消えない限り日本の溶接が衰退することはないし、それはすなわち日本のものづくりが健全な姿でもある。

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(溶接のある風景=溶接実習の模様)

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