先日の新聞で、地中海原産のチチュウカイミドリガニが東京湾などに侵入、沿岸の生態系に悪影響を及ぼす恐れがある、と報じられていた。
外来生物の影響については専門家の間では早くから指摘されていたものの社会的認識には至っていなくて、そうこうするうちに影響は着実にしかも悪化しつつ広がっているのが実情のようだ。
ここに外来生物の問題を総合的に取り上げた1冊の本がある。
日本プランクトン学会・日本ベントス学会編『海の外来生物』で、「人間によって攪乱された地球の海」と副題がついている。
本書は29人の専門家による共同執筆だが、その構成をみると、奈良大、三重大、千葉大、海洋大、名大、長崎大、神戸大、東大などに及んでいて、外来種問題に対する研究が全国的な広がりとなっていることをうかがわせた。
本書を手に取ったは、格別に外来種問題に積極的関心があったというわけではなくて大変消極的理由になるのだが、たまたま本書の共同執筆者の一人が友人だったということによる。
本書は専門書だが、一般の読者も念頭に置いているらしくやさしく記述されているのがうれしい。
外来生物を扱った本としては、これまでも陸上生物や魚類については多くの出版物があるものの、水生生物についてまとめたものはなかったということである。
外来生物には、貝類やエビ・カニ類、フジツボ類などと実に多様なものがあるらしいが、日本で見つかった外来生物(もともと日本の海には分布していなかった生物)としては76種発見されているという。
しかも、そのうちの約4割近くは船で運ばれてきているらしい。一つはバラスト水による導入であり、今一つは船体付着による移入だということである。
これもたまたまのことだが、本書を贈ってくれた友人(海洋生物学が専門)の執筆分担である「船体付着による導入の特徴」に関する章を見てみよう。
それによると、船体付着については、古くは安全性の問題として、近年では船足が遅くなるといった経済性の問題として船舶・海運関係者の間ではつとに課題となってきていて、さらに今日的課題として環境への影響が大きく浮上していると指摘している。
つまり、外来生物の移入手段として船体付着によるものが多いという現実があるからで、とくに固着力の強いフジツボなどが圧倒的に多く、まるで「フジツボワールド」だとしている。
では、その船体付着による移入をどうやって防ぐかについて本書では、防汚塗料の開発、付着しにくい船体構造の採用などがあると指摘している。
(東海大学出版会刊)

レーザプラットフォーム協議会 編
A5判
160頁
ISBN978-4-88318-035-6
価格:1,890円(本体価格:1,800円)
A5判 276頁
ISBN:978-4-88318-417-0
価格:2,520円(本体価格:2,400円)
馬場 信
新書判
326頁
ISBN978-4-88318-702-7
価格:1,200円(本体価格:1,143円)