秋葉原日記 (毎日更新)

今野敏『果断』

 隠蔽捜査シリーズの第2作。前作は読んではいなかったが、著者の作品は『同期』をおもしろく読んでいたし、本書帯惹句に山本周五郎賞・日本推理作家協会賞ダブル受賞とあったので手に取った。
 このところミステリーの世界では警察小説のジャンルが人気で次々と新しいキャラクターが出てくるが、本書は竜崎伸也警視長というキャリア警察官が主人公。
 ただ、竜崎は警察庁官房総務課長という超エリートポストから長男の不祥事で大森警察署という一介の所轄署長に左遷させられていて、本書は着任早々直面した立てこもり事件の話。
 竜崎の設定がおもしろい。本当のエリートとはこういうものかと思わせる人物像だ。
 自分を律し、妥協を廃し、厳格で、仕事に私利私欲まったくなく、責任を他に転嫁しない。それも一点の曇りもなく。
 となると聖人君子じゃあるまいし融通の利かない杓子定規な男とということになるが、これがそうではなく、面子やセクショナリズムにとらわれず、合理的で形式張らない。また、それでいてよくある豪放磊落に俺についてこい式の親分肌というものでもない。
 人質を取っての立てこもり事件発生に、すぐさま現場に出向き陣頭指揮。それも具体的対応に関しては専門家に指揮をまかせ、専門家の助言を尊重して最終決断をするというやりかた。
 まあ、軽めと、重めの手強さの中間くらいのエンターテイメントであって、とにかく読みやすくて文庫本400ページを2時間余で一気に読んでしまった。
 ただ、最後にはとんでもないどんでん返しが待っていて、これが本書の味を最後にきゅっと引き締めた。
(新潮文庫)

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