何とも奇想天外な依頼だった。
東京に鉄道を建設してほしい、資金は400億円を用意してある、しかし3年以内に開業すること。
依頼したのは旧宮家の日野宮邦彦なる老人。
依頼を受けたのは妹尾順平。勤めていた広告代理店を辞め、遺産のアパート経営で食べている。
しかも依頼内容はどんな鉄道をつくるかというプランニングとその建設の管理監督だけでいいと言い、七面倒な許認可申請などの仕事は依頼人の方でやるというもので、当座の資金として1億円が渡された。
妹尾はまず右腕に広告代理店時代の同僚木之元理恵を呼び活動を開始。
早速新会社「鉄路プランニング」を設立、スタッフには求人広告で元国鉄職員の徳武重雄58歳を採用したほか、田丸ひろみ24歳と岡島三樹夫22歳をメンバーに加えた。
いくつものプランが検討され最終的に2つに絞られた。
1つは「新宿路線案」で、これは新宿駅西口‐都庁前‐西新宿KDDIビル前‐新宿駅南口‐新宿3丁目伊勢丹前‐新宿区役所前‐歌舞伎町入口‐大ガード‐小田急ハルク前‐新宿駅西口という周回ルートを新都市交通で結ぼうというもの。
もう1つは「世田谷路線案」で、小田急の成城学園前駅と東急田園都市線の二子玉川駅の間をやはり新都市交通で結ぼうというもの。
最終的には「新宿路線案」に絞って依頼人にプレゼンテーションをしたところ、日野宮は即座に却下。
日野宮によれば、その理由は、このようなプランは専門家であれば誰でもつくれる。素人である皆さんに依頼したのは、夢の路線をつくってほしかったからだ、というものだった。
妹尾らは再度プランの練り直しにかかり、まとめたのが「港区横断ケーブル鉄道」なる路線。
これは原宿駅から表参道、青山、西麻布、六本木、赤坂、溜池を経て新橋に至るルート。
この区間は坂道が多いのだが、ここをサンフランシスコのようにケーブルカーで結ぼうというわけ。
この小説のおもしろいところはなんと言っても、東京に鉄道を敷くというプランを考えていくそのこと。こんなに楽しい夢がほかにあろうか。
新しいプランは採用され、工事にも着工された……
実際、こういう鉄道を建設してみようという篤志家はいないものだろうか。なかなか魅力あるプランではあるのだが。
( 祥伝社刊)

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430頁
ISBN978-4-88318-040-0
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