2016/06/29

ものづくりをになう溶接技術

 近代溶接がわが国に導入されて何年になるかというのは、実は、きちんと規定することは必ずしも容易ではなくて、およそ120年であろうというのが定説である。
 以来、溶接技術の発展は日進月歩であり、技術革新を重ねながら今日に至っていて、ものづくりの重要な基礎をになっている。
 溶接技術は成熟したとはよく言われるが、それは極めて一面的な見方であって、溶接プロセス一つとってみても、もちろん主流はアーク溶接ではあるけれども、レーザ溶接が発展し、FSWが登場してきているように多様な展開となってきている。
 とくに、材料が多様化する、いわゆるマルチマテリアル化の時代となって、その接合技術はますます脚光を浴びてきていて、極めて複合的であり、重層的な傾向にあり、接合できない材料は使えない、と言われるほどだが、それはとりもなおさず、あらゆるプロセスを駆使して接合するということにほかならない。つまり、溶接接合技術が、材料を制し、製品や構造物の設計に大きな影響を与えるようになってきているわけである。
 また、溶接は工業にとって不可欠の生産技術だからその生産性も重要で、このため溶接の自動化やロボット化が図られてきた。とくに、ロボット化ということではあらゆる工業技術の中で溶接が最も進んでいるし、世界においても日本の最も得意とするところでもある。
 溶接材料の生産量は、溶接工業のある種指標になるものだが、私が溶接を担当するようになった頃は、日本における年間の生産量は50万トン前後にも達していた。それが今日では30万トン前後にまで減少しているのが実態である。
 さらに、溶接への従事者数もかつては40万人を超していたものが、現在では25万人程度とみられるから、溶接材料同様に大きな変動となっている。
 これは、工場の海外への移転など様々な要因があるが、溶接技術の革新によって使用する溶接材料の種類も変わったり生産性が著しく向上したことも大きな理由である。
 ただ、溶接の自動化やロボット化がどのように進もうとも、溶接は人間の技量に負うところが大きく、人材確保と技能の伝承は喫緊にして永遠の課題でもある。
 とくに、技能者が高齢化し、人手不足が深刻化している今日の状況においては、若年層を溶接に引き込むことが肝要で、このため、高校生や女性の溶接への参入を促す活動が活発化している。それは必ずしも容易なことではないが、大きな展開となっていることは心強い。なかでも、高校生溶接コンクールについては、その盛り上がりを側面から応援してきたものの一人としても、今後の展開が期待される。
 今ここで、溶接を専門とする新聞雑誌の記者編集者としての歩みを振り返ると、溶接は自動車や建築などと縦割りの業界ではなく、あくまでも横に広がるものだから必ずしも産業を揺るがすようなものではなかったが、基本的には科学技術の世界であり、そのことがまず何よりも変化が大きく魅力的あったし、また、溶接は世界の潮流の中にいるものだから、国際交流も重要で、そのことも楽しいものだった。


写真1 ダイナミックに展開する溶接の技術革新。2016国際ウエルディングショーから。


写真2 技量の向上に切磋琢磨する溶接。第61回全国溶接技術競技会から。


写真3 大きな盛り上がりを見せてきた高校生による溶接コンクール。第7回関東甲信越高校生溶接コンクールから。 

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