2016/06/24

ゲオルギイ・コヴェンチューク『8号室 コムナルカ住民図鑑』

 著者は、ロシアの画家、エッセイスト(1933-2015)。ガガの愛称で親しまれてきたらしい。
 コムナルカとは、共同アパートのことで、本書は著者がかつて住んでいたレニングラード(現在のサンクトペテルブルグ)のコムナルカ時代の体験が描かれている。
 このコムナルカは街の中心部にあり、6階建てで、高級ホテルに比べても見劣りしない堂々たる建物だった。
 6階のフロアは小さく仕切られており、著者が住んでいた8号室には部屋が10室あり、36人から40人ほどが生活していた。ほかに共同の台所とトイレがあった。
 本書が書かれたのは1968年のことで、すでに50年近くにもなるが、本書はここに暮らす人々のエピソードが活写されている。
 一つ拾ってみよう。まずは巻頭の「フョードル・フョードロヴィチ」。フョードルは電気技師。2メートルもありそうな大男だが、いつも台所に座ってたばこを吹かしている。台所は8号室の入口に位置していたから、入ってくる人が観察でき、まるで守衛みたいなものだった。
 台所は大きく、住人はここで食事を作り、顔やときには体も洗った。また、台所ではいつも誰かが洗濯をしていた。
 なお、「当時、街には風呂屋がたくさんあった。女性用、男性用に分かれており、階が違った。風呂の入口に通じる階段にはいつも長い行列ができていて、着替えと石鹸と体を洗うたわしを入れた袋をさげた人々が、思い思いに本を読んだり、おしゃべりに興じたりしていた」。
 本書は100ページ程度の掌編だが、著者自身の挿絵も添えられていて、日頃目にすることの少ないロシアの生活がわかって面白かった。
(群像社刊)


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